研究課題/領域番号 |
18H02468
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
武宮 淳史 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80448406)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 気孔開口 / 青色光 / シグナル伝達 / フォトトロピン |
研究実績の概要 |
青色光による気孔開口は、植物の光合成を支える重要な生理反応である。本研究では、遺伝学、生化学、分子生物学、イメージングなど、多角的なアプローチを用いて気孔開口制御に関わる新たな重要因子・メカニズムを同定し、フォトトロピンが制御する光シグナル伝達ネットワークを解明することを目的としている。本年度は気孔開口に異常を示すシロイヌナズナ突然変異体の機能解析と原因遺伝子同定を中心に研究を行った。赤外線サーモグラフィを用いた大規模変異体スクリーニングにより、青色光による気孔開口が阻害された変異体を多数単離している。atg2-5変異体は本スクリーニングにより単離された変異体のひとつであり、孔辺細胞プロトプラストを用いたH+放出反応の測定により、この変異体では青色光による細胞膜H+-ATPaseの活性化が阻害されていることが分かった。そこでマッピングと次世代シーケンスによる原因遺伝子同定を進めた結果、オートファジーの必須因子であるATG2遺伝子に1塩基挿入が起こり、機能的なタンパク質が発現できないことが分かった。さらにatg2-5変異体では気孔開口を阻害する活性酸素種が孔辺細胞内に高蓄積しており、アンチオキシダントにより活性酸素種を消去したところ、気孔開口が回復することを見出した。この活性酸素種の発生源について解析を進めた結果、オートファジー変異体では酸化型ペルオキシソームが孔辺細胞内に高蓄積しており、過酸化水素の生成に関わるグリコール酸代謝を阻害すると活性酸素種の蓄積が抑えられ気孔開口が回復することが分かった。以上の結果から、オートファジーは活性酸素種が蓄積したペルオキシソームを絶えず監視し、それを速やかに分解することで、孔辺細胞内の活性酸素種の恒常性を維持し、気孔開口を可能にすることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オートファジーが孔辺細胞における活性酸素種の恒常性を制御することを発見し、フォトトロピンによる青色光シグナル伝達や光合成を支える役割をもつことを明らかにできたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き他の突然変異体の機能解析・原因遺伝子同定を進めるとともに、リン酸化プロテオームにより青色光によるリン酸化が見出された因子について機能解析を進め、フォトトロピンが制御する光シグナル伝達ネットワークの全容を解明する。
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