動物にとって睡眠は必須な生理現象であり、一日のうち“いつ眠りいつ起きるか”の決定は、地球上で生きる為の重要な生存戦略である。つまり、生命は24時間の明暗サイクルの中で、 時間的にすみ分け、その個体の生存に有利な時間帯に必要な活動を行う。哺乳類では、睡眠・覚醒は約24時間ごとに繰り返される。この24時間周期のリズムを「概日リズム」と呼び、脳内視床下部の「視交叉上核」が概日時計の中枢として生体機能の時間的統合を行う。
概日時計中枢である視交叉上核からの出力経路を同定する為、順行性トレーシング、光遺伝学や薬理遺伝学を用いた細胞機能操作、ファイバーフォトメトリーを用いたin vivoカルシウム計測、ジフテリアトキシンを用いた細胞脱落、生物発光を利用したイメージングと光操作等を総動員し実験を行った。その結果、視交叉上核の概日リズム情報は、室傍核CRF神経を介し、視床下部外側野のオレキシン神経を介し、覚醒の調節をしている事を明らかにした。
昨年度は、開発した新規生物発光カルシウムプローブを用い、視交叉上核と室傍核を含む脳スライスを作成し、神経活動を計測しながら、視交叉上核の神経活動を、光遺伝学ツールを用いて操作したところ、視交叉上核の活動依存的に室傍核CRF神経の抑制が観察された。さらにこの室傍核CRF神経の活動抑制には、抑制性神経伝達物質であるGABAが関与している事を明らかにした。これらの結果をまとめ、昨年度に論文を投稿し、9月に論文が受理された。
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