研究課題/領域番号 |
18H02478
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
沼田 英治 京都大学, 理学研究科, 教授 (70172749)
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研究分担者 |
大門 高明 京都大学, 農学研究科, 教授 (70451846)
志賀 向子 大阪大学, 理学研究科, 教授 (90254383)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光周性 / 昆虫 / 概日時計 / 中枢神経系 / 休眠 |
研究実績の概要 |
【ホソヘリカメムシ】 短日で飼育した成虫の頭部を短日または長日で培養し、両者の遺伝子発現を比較した結果、ある遺伝子の発現が長日で有意に高くなることを見出した。これはからだの他の部分から切り離された頭部のみで、光受容から遺伝子発現の違いに至るまでが完結する光周性である。一方、頭部の培養系にClock遺伝子の一部に対応する2本鎖RNAを加えることによって、同遺伝子の発現量を十分の一にまで抑制することができた。すなわち、頭部の培養系でRNA干渉によって遺伝子発現を抑制することが可能なことが確かめられた。また、培養条件ではなく短日で飼育した成虫を短日のままにおいたものと長日に移したものの頭部で遺伝子発現を比較したところ、幼若ホルモンの合成酵素の一つであるMethyl Farnesoate Epoxidaseの発現が長日に移した場合に有意に高くなることが明らかになった。頭部の培養系で発現に差がみられた遺伝子とMethyl Farnesoate Epoxidase遺伝子の発現は、この虫の光周性においてこれまでわかっているなかでも、ごく早い段階で違いがみられるものである。 【カイコガ】 母親が胚期および幼虫期に経験した光周期によって子世代が休眠に入るかどうかが決まる江淅系統において、TALENにより時計遺伝子periodをノックアウトした系統を2系統作製した。片方はエクソン7において8塩基が欠損しているものであり、もう片方は13塩基が挿入されているものである。後者では挿入された部分に終止コドンが含まれているため、PERIODタンパク質が極端に短くなっていると推定される。また、カイコガPERタンパク質のポリクローナル抗体を作製して幼虫の脳を染色したところ、脳間部を含め4領域にPER陽性細胞が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【ホソヘリカメムシ】 頭部の培養系で見られる光周性を発見したことと、頭部の培養系でRNA干渉による遺伝子抑制が可能になったことで、光周性の分子機構において時計遺伝子が関与する部分の解析に進むことができる。 【カイコガ】 光周期を示す江淅系統において、periodのノックアウトした系統を作製したので、時計遺伝子の光周性における役割の検討に進むことができる。
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今後の研究の推進方策 |
【ホソヘリカメムシ】 頭部の培養系でいくつかの遺伝子のRNA干渉を行って、光周性のできるだけ初期の段階で機能する分子を見出し、その解剖学的局在を調べて、光周性中枢の研究へと進める。 【カイコガ】 江淅系統と、それから作り出したperiodのノックアウト系統の概日リズムと光周性を詳細に検討することが、次のステップである。
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