研究課題/領域番号 |
18H02480
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
富岡 憲治 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30136163)
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研究分担者 |
守山 禎之 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30707394)
吉井 大志 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (50611357)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 概日時計 / 光同調 / 複眼 / 時計遺伝子 |
研究実績の概要 |
Cryによるリセットに関わる遺伝子を特定することを目指して、日暮れと夜明けの光照射によりc-fos依存的に発現量が変化する遺伝子をトランスクリプトームにより探索し、候補としてBRWD3、複数の Fbxlなどを発見した。さらにqPCRにより候補遺伝子の一つであるFbxl3が暗期後半の光照射3時間後から発現上昇することを見出した。一方、CRYタンパク質の発現・修飾を検討するため、抗CRY1, 抗CRY2抗体を用いた免疫組織化学およびWesternブロットを試みており、これまでのところ、視葉内に抗CRY2陽性の細胞をいくつか見出している。 光によるリセット機構の解析のため、時計遺伝子のRNAiによる影響を解析した。その結果、timeless遺伝子の発現抑制により明暗周期を6時間前進させた場合には正常個体とほぼ同様の再同調を示すが、6時間後退させた場合には再同調できないことが分かった。明期を延長して同調させる場合には、Pdp1が発現し、引き続きClk, per, timが発現誘導されることから、timがPdp1の下流で必須の役割を担うことが示唆された。そこで、timのタンパクレベルでの変動を解析するため、抗TIM抗体を作成した。この抗体を用いて、免疫染色を開始する予定である。一方、光受容器である複眼内にも弱いながら自律振動体があることを明らかにした。 マダラシミでは、RNAiによりcry2の光同調への関与を検討し、その発現抑制により位相後退が促進されることを明らかにした。キイロショウジョウバエでは、tim-Gal4にUAS-c-fosRNAi,UAS-FbxlRNAi, UAS-BRWD3RNAiを組み合わせた形質転換体を作成し、光同調にこれらが関与する可能性を検討した。その結果、BRWD3がリズム形成そのものに関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
cryによるリセット系については、関連する遺伝子の探索を行い、絞り込みつつあり、これが特定できれば、その解析を一気に進めることができるところまで進展している。 新たにtimelessがリセットに必須の役割を担うことを明らかにした。今後、timelessの発現と今年度作成した抗体を用いた解析を進めることで、日暮れ時のリセット機構の全容の解明が期待される。 さらに、複眼を対象とした解析を進め、複眼内にも自律振動機構があることを示した。視葉から切り離された複眼には神経はなく、もし光同調能があればそれは神経伝達物質に依存しない機構によるものと推定され、本研究の当初の計画以上の進展をもたらす可能性が高い。
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今後の研究の推進方策 |
cryによる同調機構に関しては、引き続き候補となる遺伝子の光による発現をqPCRにより解析し、さらにRNAiによる歩行活動リズムを指標として、光同調への関与を検討する。これにより、光同調に関わる新規遺伝子とその役割を明らかにする計画である。 日暮れのリセット機構については、Pdp1とtimの関係を、double RNAiによる両者の発現抑制を利用して、分子レベルと行動レベルで解析を進める。さらにTIM抗体を用いた、タンパクレベルでの解析を進め、光同調時のTIMの挙動とそれへのPdp1の関与を検討し、日暮れのリセット機構を解明する。 複眼内のリズムについては、ERGを利用した解析を試み、光リセットが生ずるかどうか、またリセット時の時計遺伝子発現についても解析を進める。
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