研究実績の概要 |
本年度は昨年に引き続き①c-fosが光依存的に発現誘導する遺伝子の探索と機能解析,②timとPdp1の光同調機構における役割の解析,③複眼依存性光同調機構の普遍性と多様性の検討を並行して進め,以下の結果を得た。 ①c-fosの下流で光依存的に発現する遺伝子をさらに探索し,BRWD3,Fbxl3,Fblx4, Fbxl5, Fbxl7, Fbxl13, Fbxl16を特定した。いずれも光により誘導され,c-fosRNAiにより光誘導は顕著に抑制されること,これらの発現には日周リズムがあり,ピークの位相により3型に分類されることが分かった。これらのRNAi処理個体で活動リズムの6時間前進または後退した明暗周期への再同調を解析したところ,Brwd3, Fbxl3, Fbxl7のいずれのRNAiでも再同調が有意に遅延することが明らかとなった。これらの産物タンパク質はCRYのリン酸化に関与することが知られており,CRYの修飾を経てリズムの制御に関与する可能性が示唆された。 ②Pdp1とtimの解析では,TIMは明暗周期下で夜間に増加するが,Pdp1RNAiがこの増加を有意に抑制することを見出した。6時間位相後退後のリセット時に,Pdp1, timともにmRNAレベルが上昇し,Pdp1RNAiは有意にtim mRNAレベルを低下させることが分かった。位相後退後の行動リズムの光同調がtimRNAiにより強く阻害されることと合わせて,Pdp1の光誘導に続くtimの誘導がリセットに関わる可能性が示唆された。 ③マダラシミを用いた cry2,BRWD3, Fbxlの光同調機構における機能解析では,tim,c-fos,Fbxlが前進,後退に関与し,Brwd3が前進に,cry2が後退に関与する可能性が示唆された。一方,ショウジョウバエではBRWD3のRNAiにより光同調が促進されることを見出した。
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