研究課題/領域番号 |
18H02481
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
粂 和彦 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (30251218)
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研究分担者 |
冨田 淳 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 講師 (40432231)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 睡眠 / 概日周期 / ショウジョウバエ / ドーパミン |
研究実績の概要 |
当初計画に従い、複数のモダリティの外部刺激が睡眠や覚醒を誘導する入力経路の解析、中心複合体の睡眠制御回路の解析、新規睡眠制御遺伝子であるSIK3の機能解析を行った。 栄養情報・味覚情報による睡眠行動の解析の目的では、従来から行っている各種アミノ酸による睡眠調節をより詳細に解析した。特に、生体の主要物質であるL型のアミノ酸に加えて、D型のアミノ酸による影響も網羅的に解析した。その結果、最も単純な構造をもち光学異性体のないグリシンが睡眠を誘導し、また、L型ではL-アラニンやL-バリンに、D型では、D-セリン、D-アラニンなどに睡眠を誘導する作用が見いだされた。D型アミノ酸による作用機序を確認するため、L型からD型を生成する酵素であるラセマーゼのノックダウンなどの影響を、現在、解析中である。また、甘味受容体は発現する神経細胞と直接つながる甘味感覚の二次神経を活性化したところ、睡眠を誘導する神経と、睡眠を抑制する神経の両者を発見した。そこで、両者の違いを中心に解析を続けている。 中心複合体を介する睡眠制御回路の解析としては、GRASP法を用いて、中心複合体内の亜領域間をつなぐインターニューロンの回路の同定を進めており、中心複合体外部のドーパミン神経が投射する新規部位の同定と、その部位で機能するドーパミン受容体のサブタイプの同定に成功した。この部位では、領域内だけに投射する神経を介して、同部位の別の神経に情報が引き渡され、その神経が睡眠中枢と考えられている扇状体に投射することまで証明した。 新規睡眠制御遺伝子であるSIK3については、その下流で働くと考えられている遺伝子の機能を解析し、その過剰発現がSIK3の変異型遺伝子の過剰発現と、同様の表現形を示すことを発見した。この結果は、SIK3の睡眠制御における機能の本質に迫る発見である。 これらの結果は、国内外の学会で発表し、論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究提案で行った計画に基づいて、ショウジョウバエの睡眠覚醒機構を、複数の切り口から総合的に解析を行い、研究を進めている。その中で、結果に書いた三つの点については、従来からの研究が順調に進み、新規の知見が多数得られたため、学会発表も行い、論文も準備中であり、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、研究計画は順調に進んでいるため、今後も、当初計画に基づいて、さらに解析を進め、ショウジョウバエの睡眠覚醒制御機構の全貌を解明するための研究の一翼を担っていく。また、今年度は、学会発表だけではなく、論文としても結果をまとめて発表することを急ぎたい。
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