研究実績の概要 |
当初計画に従い、最終年度は、以下の研究を展開した。 ・栄養・味覚情報による睡眠制御解析では、赤外線マルチビーム装置を用いた詳細な位置解析による嗜好性の検討手法を確立し、キシリトールやソルビトールなど、甘味を持たないが栄養のある糖類を長期間投与すると、嗜好性が認められる機構が、飢餓状態で誘導されやすいことを発見した。また、記憶回路の変異株を調べたところ、この機能には影響がなかったことより、この変化が従来知られている記憶以外の機能を使っていることが示された。 ・中心複合体の回路については、T1ドーパミン神経が前大脳橋と腹側扇状体を介して背側扇状体に情報を伝える経路を完全に解明した。この経路では、ドーパミン神経と背側扇状体との間に3つの神経が存在する。1個目が、前大脳橋の介在神経で、D2タイプのドーパミン受容体を使ってT1のシグナルを受け、アセチルコリンを使って同じ前大脳橋からの出力神経に投射する。2個目が、前大脳橋から腹側扇状体に出力する神経で、やはりアセチルコリンを使って、扇状体の介在神経である橋神経に投射する。3個目が、橋神経で、扇状体の腹側でシグナルを受け取り、扇状体の背側に投射する。最後に、このシグナルを受け取った背側扇状体神経が、睡眠覚醒を制御する。この神経回路の全接続を、GFPの再構成を利用したGRASP法や、機能的イメージング法を用いて証明した。 ・断眠したマウスの脳でリン酸化が活性化されるタンパク質であるSNIPPs(Sleep Need Index Phosphoproteins,Wang et al Nature 2018)のハエのホモローグの解析から、リン酸化状態に日周期が認められるタンパク質を発見した。 中心複合体の回路について、二つの論文にまとめて投稿中である。
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