研究課題/領域番号 |
18H02484
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
久原 篤 甲南大学, 理工学部, 教授 (00402412)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | C. elegans / 温度馴化 / 神経回路 / カルシウムイメージング / 温度受容ニューロン |
研究実績の概要 |
環境への馴化を制御する脳神経系の機能の解明は生命科学の大きな課題の一つである。本研究では、オリジナルの温度応答に関わるC. elegansのシンプルな神経回路をつかい、温度馴化現象のメカニズムを多面的に明らかにする。用いる神経回路は、頭部温度受容ニューロンが尻尾の介在ニューロンに接続し、それが頭部の介在ニューロンに情報フィードバックを行う全身を周回する神経回路とそれらと接続する神経回路である。 C. elegansの低温馴化に関わる分子とシンプルな神経回路を明らかにするために、過去のDNAマイクロアレイ解析のデータを利用した。具体的には温度変化により発現変動する遺伝子であるflp-17に着目し解析を進めた。その結果、flp-17変異体では低温耐性に異常がみられた。しかし、flp-17変異体に野生型のflp-17遺伝子を導入しても変異体の低温耐性異常が回復しなかったため、セカンドミューテーションであると考えられた。そこで、次世代DNAシークエンサーをもちいてその原因変異を同定したところ、キサンチンデヒドロゲナーゼXDH-1の遺伝子の変異が低温耐性異常の原因であった。XDH-1の発現細胞は頭部のニューロンと腸と浸透圧調節細胞であった。xdh-1変異体の低温耐性異常はxdh-1変異体のAINとAVJと呼ばれる2対の介在ニューロンで同時にxdh-1遺伝子を発現させることで回復した。AINとAVJ介在ニューロンの上流の温度受容ニューロンとしてASG感覚ニューロンを同定した。カルシウムイメージング解析解析から、ASGで受容された温度情報がAINを正に制御し、AVJを負に制御することが示唆された。これらの神経経路は昨年度までに解析をおこなってきた低温馴化に関わる尻尾の介在ニューロンに接続している。本研究から動物の温度馴化や神経情報処理の神経ネットワークの基本原理が明らかになると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温度記憶を伴う低温馴化現象のメカニズムを多面的に明らかにするために、オリジナルの温度応答に関わるC. elegansのシンプルな神経回路をつかい解析を進めている。本年度は、低温耐性に関わる新規の神経回路を、順遺伝学的な低温耐性の変異体の原因遺伝子とその機能細胞を同定することにより明らかにした。具体的には、新規の温度受容ニューロンASGで受容された温度情報がAINを正に制御し、AVJを負に制御することが示唆され、これらの神経経路は昨年度までに解析をおこなってきた低温馴化に関わる尻尾の介在ニューロンに接続していたことから、当初の計画通り研究が行われていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、トランスクリプトーム解析から同定した温度に応答する分子については、その変異体の温度馴化への関与を調べる。さらに、同定した遺伝子の発現細胞を調べ、それらの細胞で特異的に遺伝子を発現させることで、温度馴化に関わる神経回路が影響を与える未知の組織を見つける。それらの組織と細胞活動のCa2+イメージングから温度記憶を司る細胞ネットワークを明らかにする。また、原因遺伝子の種類によっては、温度記憶ニューロン内の温度記憶を人工的に操作することで、温度記憶の新規の生理的性質を捉える。具体的には、光駆動性チャネルであるチャネルロドプシンを利用して、温度応答時の神経回路を操作し、そのダイナミクスを捉える。その逆に再構成カスパーゼなどを用いて、細胞死を引き起こし相反する表現型が見られるかを確認する。
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