研究課題/領域番号 |
18H02485
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
仁木 宏典 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 教授 (70208122)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トポロジカル結合 / ssDNA / コンデンシン |
研究実績の概要 |
コンデンシン複合体はDNAの凝集因子として、ヒトを含めた真核生物から大腸菌や枯草菌などのバクテリアまで共通に保存されている。コンデンシン複合体のコアサブユニットはSMC(Structural Maintenance of Chromosome)ファミリーと呼ばれるタンパク質の仲間である。SMCタンパク質は両端に球状ドメインを持つ棒状タンパク質で、その中央で折れ曲がる。この折れ曲がり部分で、SMCタンパク同士が結びつきリング構造の二量体を形成する。そして、このリングの内部にDNAを保持する、いわゆる「トポロジカルなDNA結合活性」がある。私たちはバクテリアコンデンシン複合体が一本鎖DNA(ssDNA)特異的にトポロジカルDNA結合することを見出した。次の疑問として、1)なぜssDNAを特異的に認識し(ssDNA認識)、2)どのようにしてDNA挟みこみ(トポロジカル結合能)、3) トポロジカル結合後にどのようにしてDNA凝縮させるのか(凝集活性)、以上3点の分子特性を大腸菌や枯草菌のコンデンシンの機能を比較しながら探求する。まず、「ヘッドドメインのリング内部のアミノ酸残基がssDNAと結合し、ヘッドの構造変化を誘起しリングの開閉を制御する」という「ssDNAセンサー仮説」を立てこの実証に取り組んだ。2018年度はMukBのヘッドの結晶構造をもとに、ssDNA結合に重要なポジティブチャージの残基を推定し、アミノ酸変異置換変異タンパク質を作成した。特にリングの内側にあるポジティブチャージの残基は、トポロジカル結合したときに、ssDNAとdsDNAを見分けるときに関与すると考え、それらを体系的に解析した。そして、これらの変異タンパク質の表現形を解析し、機能的に重要なアミノ酸残基の探索を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MukBの主なDNA結合部位であるヘッドドメインを対象とした変異解析を行った。正電荷を持つLys及びArg残基に、負電荷を持つGlu及び中性電荷を持つGlnへの置換変異を導入し、それらの変異体の機能を解析した。精製した変異型MukBを用いてゲルシフトアッセイを行ったところ、K75E変異体及びR112E変異体は一本鎖DNA結合と二本鎖DNA結合が共に低下していたのに対し、K75Q変異体及びR112Q変異体は二本鎖DNA結合が特異的に低下していた。mukB欠失株を用いた相補性試験から、K75Q変異体とR112Q変異体はMukB機能を保持しているが、K75E変異体とR112E変異体は機能を失っていることがわかった。これらの結果は、K75及びR112が一本鎖DNA認識に関与し、その一本鎖DNA結合活性がMukB機能に必須の役割を果たすことを示唆する。以上のように、「ヘッドドメインのリング内部のアミノ酸残基がssDNAと結合する」という作業仮説を支持する結果を得られ、研究の方針の妥当性が実証された。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらにヘッドドメインを網羅的に解析し、一本鎖DNA特異的な結合の全容を解明する。また、一本鎖DNA結合と二本鎖DNA結合については、さらに定量的な解析を進める。
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