本研究は、配偶者選好性の進化の神経基盤を解き明かすために、モデル生物キイロショウジョウバエ(以下キイロ)と姉妹種オナジショウジョウバエ(以下オナジ)の求愛歌に対する選好性に着目し、その種間差の神経基盤を解明することを目的とした。昨年度までに、オナジにおいて聴覚1-3次ニューロン群を標識するGAL4系統を確立し、パルス間隔選好性に行動レベルの種間差があることを明らかにした。そこで本年度は、聴覚神経ネットワークにおいてこのパルス間隔選好性がどのように表現されるのかを明らかにするために、聴覚2次ニューロンの神経活動のパルス間隔選好性を種間比較した。 聴覚2次ニューロンの神経活動の定量には、カルシウムイメージングを用いた。さまざまなIPIの人工パルス歌による2次ニューロンの神経応答を計測できた。カルシウムレベルのピーク値を用いて神経活動量を比較すると、キイロは短いIPIにより強く応答するのに対し、オナジは25msのIPIに対してより強く応答する傾向があった。オナジの2次ニューロンがキイロよりも長いIPIに対して強く応答したことから、聴覚情報処理の種間差はすでに2次ニューロンの神経活動レベルにおいて存在していることが初めて示された。
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