研究課題
二種類の行動テストを用いて様々な犬種における認知能力を比較するとともに、それらの行動に関連する遺伝子の探索を行った。犬種を8つの犬種グループに分類して比較を行ったところ、振り返りテストにおいて、古代犬グループのイヌはヒトを振り返らない傾向が見られた。一方、指差し二者選択課題では、8つに分類した犬種グループでは有意な差が見られなかったものの、古代犬グループとその他の犬種グループとの二群比較において、古代犬グループのイヌの方が正答数が高い結果が得られた。続いて、認知能力に関連する遺伝子の探索を行った。コミュニケーション能力に関わるホルモンとして、オキシトシンとコルチゾールに着目し、メラノコルチン2受容体(MC2R)とオキシトシン、オキシトシン受容体の遺伝子を選択した。さらにゲノムワイド解析によってイヌの進化に関わると報告されている候補遺伝子からWBSCR17を選抜し、これらに関連する遺伝子の多型を調べ、犬種差や行動実験の結果との関連性を調べた。その結果、振り返りテストと関連性の見られる多型がOTにおいて一か所見られた。さらには、WBSCR17において、振り返りテスト及び指差し二者選択課題両方に関連性が見られる多型がひとつ見つかった。また、MC2Rで、振り返りテストと関連性が見られる多型が一つ(MC2R1)、指差し二者選択課題と関連性が見られる多型が一つ(MC2R2)、また振り返りテスト及び指差し二者選択課題両方に関連性が見られる多型が一つ(MC2R3)見つかった。犬種差による遺伝子型の偏りを取り除くために、古代犬グループ及びその他の犬種グループに分けてそれぞれのグループ内での更なる解析を行った。その結果、その他の犬種グループにおいて、OT多型と振り返りテストで関連性が見られた。
2: おおむね順調に進展している
本年度では、行動と遺伝子多型との関連を見出すことができた。これを元に、行動および遺伝子多型と内分泌との関連解析に着手している。コルチゾールアッセイはほぼ完了しており、オキシトシンアッセイ完了後に解析を行う。
2019年度は引き続き、イヌゲノムSNPマイクロアレイによる行動との関連解析および遺伝的多型と内分泌機能の関連解析を行う予定である。また、新たな候補遺伝子も見出しつつあるため、関連領域を絞り、次世代シークエンサーの結果も合わせて、候補遺伝子をしぼっていく。また、関連が得られた遺伝子多型については、犬種を特定して、確認する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Physiol. Behav.
巻: 201 ページ: 104-110
doi.org/10.1016/j.physbeh.2018.12.023
J. Hered.
巻: 8 ページ: 566-572
doi.org/10.1093/jhered/esy012