トンボは、基本的に視覚で相手を認識するため、体色や斑紋に著しい多様性が見られる。申請者らは、色覚に関わるオプシン遺伝子がトンボで極端に多様化していること、オプシン遺伝子の発現は幼虫と成虫で大きく異なることを見出した。また、アカトンボの体色変化は色素の酸化還元反応が原因であること、シオカラトンボの体色変化はUV反射Waxの産生によることを発見した。これらの知見により「トンボの幼虫と成虫で色覚はどのように変化するのだろうか?」「トンボの体色変化には、どのような遺伝子が関与するのだろうか?」などの素朴な疑問が浮かび上がった。これらの疑問の解明に向けて、申請者らはトンボの遺伝子機能解析系と実験室内飼育系を確立することに成功した。本研究課題では、申請者らが構築した一連の実験系を用いてトンボの色覚と体色形成の分子基盤を深いレベルで解明することを目指す。2019年度は、紫外線カメラで様々な種類を観察した結果、トンボのワックス産生部位では紫外線を反射すること、紫外線反射ワックスの種類やそれにかかわる遺伝子は種ごとに異なること、種によっては特徴的な紫外線吸収パターンがみられることを見出した。また、メラニンやプテリジン合成にかかわる遺伝子に着目し、RNAseqによる領域特異的な遺伝子の探索と、RNAiを用いた遺伝子機能解析よって着色に必須な遺伝子を同定することに成功した。さらに、トンボの淡色メラニンの種類に関しても、同定を行った。
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