研究課題
トンボは、基本的に視覚で相手を認識するため、体色や斑紋に著しい多様性が見られる。申請者らは、色覚に関わるオプシン遺伝子がトンボで極端に多様化していること、オプシン遺伝子の発現は幼虫と成虫で大きく異なることを見出した。また、アカトンボの体色変化は色素の酸化還元反応が原因であること、シオカラトンボの体色変化はUV反射Waxの産生によることを発見した。これらの知見により「トンボの幼虫と成虫で色覚はどのように変化するのだろうか?」「トンボの体色変化には、どのような遺伝子が関与するのだろうか?」などの素朴な疑問が浮かび上がった。これらの疑問の解明に向けて、申請者らはトンボの遺伝子機能解析系と実験室内飼育系を確立することに成功した。本研究課題では、申請者らが構築した一連の実験系を用いてトンボの色覚と体色形成の分子基盤を深いレベルで解明することを目指す。2021年度は、トンボの幼虫と成虫で特異的に発現する遺伝子の発現解析および機能解析の結果を整理して、トンボの変態制御メカニズムに関してPNAS誌に責任著者として論文発表を行った。この過程で、成虫の体色形成に関わることが予想される遺伝子を整理することができた。また、昆虫の色素および色素関連遺伝子に関するこれまでの知見を整理して総説を発表した。さらに、前年度に引き続き、色素合成や模様特異的に発現する遺伝子の機能解析を行い、体色に関わる新規遺伝子を複数同定することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
体色に関わる遺伝子の探索および機能解析は順調に進んでおり、幼虫から成虫への変態制御メカニズムに関して論文発表を行うことができた。なお、一部のサンプルは、入手が難しいものがあったため、研究期間の延長を行って対応している。
これまでに体色と関連がみられた遺伝子を多数同定することに成功したため、RNAiによる機能解析およびRNAi後のRNAseq解析によって引き続き色素合成やパターン形成に関わる遺伝子の解明を進めていきたい。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (3件) 備考 (1件)
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