研究課題
基盤研究(B)
トンボは、基本的に視覚で相手を認識することから、雌雄や近縁種間で成虫の体色・斑紋に際立った多様性が見られる。トンボの体色形成に関する分子基盤は、ほとんど不明であったが、本研究では最初に各種トンボ類で幼虫から成虫になる際の形態変化を記載し、終齢幼虫前半のステージ1に局所的RNAiを行うことで、表皮の場合はほぼ100%の効率で遺伝子機能阻害が可能であることを見出した。この系を用いて、成虫への変態に必須な遺伝子や、体色・斑紋形成に重要な遺伝子を複数同定することに成功した。
昆虫分子生物学
本研究では、各種トンボ類が地味な体色の幼虫から色鮮やかな成虫へと変態する際の形態変化の詳細を記載し、変態の際に必須となる3種類の転写因子を特定することができた。これは昆虫の多様性を担う変態を制御する分子機構に関する新知見であり、完全変態昆虫で蛹の形質を規定する遺伝子が、昆虫間でどのように進化してきたかを理解する上で重要な発見である。また、トンボが分泌する特殊な紫外線反射ワックスに関して国際特許を取得できたので、新たな生物由来の素材として利用できる可能性がある。