研究課題/領域番号 |
18H02495
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山田 敏弘 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70392537)
|
研究分担者 |
小松 俊文 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (40336201)
藤浪 理恵子 京都教育大学, 教育学部, 講師 (40580725)
小藤 累美子 金沢大学, 生命理工学系, 助教 (40324066)
西山 智明 金沢大学, 学際科学実験センター, 助教 (50390688)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 小葉類 / 根 / シルル紀 / デボン紀 / 土壌形成 / ベトナム / 初期陸上植物 |
研究実績の概要 |
1)小葉類・真葉類の培養実験,遺伝子発現・機能解析 培地の基質,リン・窒素濃度を変えた条件で小葉類(ヒカゲノカズラ)を培養し,主根の伸長率と側根形成率の測定を試みた。しかし,ヒカゲノカズラの根を高栄養状態で水耕栽培すると,カビが発生し,根が枯死することがわかった。また,培養器に収めるためにシュート系・根系の一部を切り出して培養に用いたが,切断部からの脱水により,植物体の成長が芳しくなかった。そこで,これらの問題に対処するため,実験条件の再検討を行った。その結果,植物体をPlant Preservative Mixture (PPM)で洗浄した後,切り口をワセリンで保護する培養法を確立した。また,根で発現する遺伝子の機能解析を行うため,トウゲシバの不定芽の培養条件を検討した。 2)デボン紀化石植物の調査および植物化石の解析 ベトナム北部のHa Giang省Dong Van地区に露出する”下部デボン系”Si Ka層を対象に地質調査と植物化石採集を行った。Si Ka層の年代を確認するため,持ち帰ったサンプルについて花粉・胞子分析を行ったところ,後期シルル紀の胞子群集である可能性が示された。これまでSi Ka層は国境を越えた中国雲南省の下部デボン系に対比されてきたが,本研究の結果,上部シルル系であることがわかった。また,Si Ka層の植物化石は,体制が貧弱なリニア類やシルル系に多いゾステロフィルム類が大半を占めた。この結果は,Si Ka層が上部シルル系であるとする胞子分析の結果と調和的であった。地質調査の結果,Si Ka層中に直立茎の痕跡が認められた。これらはアジア最古の現地生植物化石群集であり,今後その産状を調査することで,初期陸上植物が地球環境に与えた影響や根の起源に迫る研究の展開が可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)小葉類の根の培養が予想外に難航し,培養条件の検討が必要になったため。 2)当該課題の開始年度に,代表者は現所属機関に異動した。しかし,前任者による実験室の明け渡しが滞り,実験開始が大幅に遅れたため。
|
今後の研究の推進方策 |
1)培養条件の検討は難航したが,最適な条件を発見できた。そのため,その条件を用いて培養を行なっている。当初の予定では,主根と側根の成長率だけを解析する予定であったが,実験を進めた結果,栄養条件によって根毛の成長率が変化するという予備的なデータが得られた。そのため,根毛成長率についても今後解析を行う予定である。 2)Si Ka層が上部シルル系であるという結果は完全に予想外であったが,アジア最古の植物化石群集であることが示されたのは重要な発見である。今後の本研究のインパクトを上昇させるために,この解釈の礎となった胞子解析の結果を出版することに注力したい。また,大型植物化石については,これまでデボン紀の化石群集との比較を行ってきたが,次年度以降は,ゴンドワナ北部(オーストラリアなど)のシルル紀植物化石との比較も行う。 3)遺伝子機能解析では,パーティクルガンを用いて不定芽に遺伝子を導入する予定である。本年度,トウゲシバの不定芽から植物体が再生することを確認したので,次年度以降,遺伝子導入を試みる。
|