研究実績の概要 |
本年度は2019年8月と2020年1月に、現地でゲノム解読及び集団解析用の試料採集を行った。昨年度行ったO. balansaeの新規ゲノム解読については、継続的に改善を試み、ゲノムアセンブルをNECAT、エラー修正をRacon及びPilonで行った結果、N50値は 0,5Mbpから1.11 Mbpと改善された。また、本ゲノム情報を参照ゲノムとして用い、O. baladica, O. balansae, O. sulfurea, O. pulchella, O. morierei, O. subverticillata, O. palmatinervia, O. ovata, O. oblongifolia, O. doubetiae, O. pancheri, O. longifoliaの計12種についてPSMCを行う事で、過去数百万年の個体群動態の復元に成功した。これらの集群の個体群動態と種分化のタイミングについて興味深いパターンを見出すことができた。 集団解析としては、O. balladica、O. dubedtiae、O. microcaryxの3種について予定通りゲノム縮約解読を行い、現存する個体群の遺伝的多様性、個体群間の遺伝的分化、分類群間の系統関係を明らかにした。また、昨年度に発見した広義のO. palmatiberviaにおける隠蔽種の可能性について、さらに詳しい解析を行った。その結果、遺伝的分化程度及び、推定された分岐年代からも、これらには別種レベルの遺伝的違いがあることが示され、このことはITS2の変異情報とも矛盾しなかった。これらの結果を踏まえた外部形態観察の結果、2系統は花形質(花冠,雄蕊・雌蕊の長さ)及び葉柄上の皮目の有無によって明瞭に区別できることが分かったので、本研究により初めて発見された隠蔽種であると結論付け、新種として発表する予定である。
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