研究課題
本研究計画では、日本産ハブ属3種の毒液タンパク質遺伝子の塩基配列多様性の大規模検出(計画1)と毒液タンパク質のオミクス解析(計画2)を行い、ハブの毒液タンパク質の多様性とその進化過程の解明を解明することを目的としている。計画1については、昨年度に引き続き、毒液タンパク質セット50遺伝子と非毒型パラログ12個についてのシークエンスを進めている。毒液タンパク質遺伝子には多数のパラログが存在し、パラログ間では加速的な遺伝子分化がおこっていることが既にわかっていたが、各オルソログは集団間での多様性が低く、個々のオルスログには進化的制約が強くかかっていることがわかってきた。毒液タンパク質遺伝子セットとの比較対象としてミトコンドリアDNAの配列決定とデータ収集を進めた。先行研究(2013-15年度基盤C)で、多型性の特に高い領域として選定した5kbを対象に、11島からの計107個体についての変異情報を取得している。また計画2の研究協力者から提供を受けた個体を合わせて、合計9島からの計46個体から、筋肉組織、毒腺、毒液を採取した。このうち35個体については、毒腺からのRNA抽出を完了しており、RNAシークエンスを進めている。また、毒液のプロテオーム解析については、研究分担者(東北大学・小川智久)が進めており、これまでに12個体分を完了している。計画2の本年度までの解析から、毒腺での遺伝子発現パターンおよび毒液タンパク質プロテームについては、集団間の差異に加えて、集団内部の個体差も非常に大きいことがわかってきた。一方、久米島と伊平屋島での追加の採集を予定していたが、新型肺炎の流行などで研究協力者の都合がつかず、今年度も行うことができなかった。
3: やや遅れている
研究協力者(寺田考記(沖縄衛生環境研))の都合により、当初予定していた現地調査と採集が一部遂行できなかったため、計画2のためのサンプル収集がやや遅れている。また、新型肺炎の流行で、国外の解析会社に依頼しているシークエンスの納品が大幅に遅れている。
1. [検体整備]:事情により本年度に収集ができなかった2島を含む、伊平屋島、渡嘉敷島、久米島での採集を、研究協力者(寺田考記(沖縄衛生環境研))の協力のもと遂行し、計画2のための検体収集を完了する。計画1のための検体収集はひきつづき進めていく。特に個体間の発現変動が予想外に大きい問題に対応するために、性別やサイズさらには生理条件などをできるだけ揃えた検体セットを収集することを目指す。2. [毒液タンパク質遺伝子セットの解析]:毒液遺伝子がクラスター構造を作っている場合などアンプリコン設計が困難な場合は、通常のPCRによるダイレクトシークエンスおよびショットガンシークエンスに切り替えて、データ取得を進める。3. [毒腺のトランスクリプトーム解析]:取得済みの毒腺からのRNA抽出とRNAシークエンスを進める。また個体間の発現変動が予想外に大きい問題については、検体の追加収集で対応する。4. [毒液のプロテオーム解析]:研究分担者の小川智久(東北大学)の協力のもと、毒液のプロテオーム解析を引き続き進める。
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