研究課題
本研究計画では、日本産ハブ属3種の毒液タンパク質遺伝子の塩基配列多様性の大規模検出(計画1)と毒液タンパク質のオミクス解析(計画2)を行い、ハブの毒液タンパク質の多様性とその進化過程の解明を解明することを目的としている。計画1(ハブ属3種の毒液タンパク質遺伝子の配列多様性の大規模検出)については、毒液遺伝子セットを対象としたアンプリコンシークエンスによる変異検出を計画していたが、PCR条件の最適化が難航し、島集団のあいだで毒液遺伝子のコピー数やクラスター構成が異なっていることが示唆された。そのため、公開済みの奄美大島産個体のゲノム情報に加えて、沖縄本島産、小宝島産(トカラハブ)、西表島産(サキシマハブ)の全ゲノムアセンブリーを取得し(先進ゲノム支援の支援による)、集団間のクラスター構造の比較を行い、金属プロテアーゼやC型レクチンなどの遺伝子族で、集団間でクラスター構造が明確に異なっていることを見出した。また並行して、先行研究(2013-15年度基盤C)で多型性高い領域として選定済みのミトコンドリア領域5kbを対象に、ダイレクトシークエンスにより14島からの計150個体についての変異情報を取得し、集団間での遺伝的分化と移住の程度を定量した。計画2と毒液タンパク質のオミクス解析(計画2)については、合計9島からの計55個体から、筋肉組織、毒腺、毒液の採取を完了した。このうち47個体の毒腺からのRNA抽出を完了しRNAseqを行ったところ、集団間で有意に発現レベルの異なる遺伝子を同定したが、予想に反して、これらの中には毒液タンパク質遺伝子はほとんど含まれていなかった。これに対して、研究分担者(東北大学・小川智久)による毒液タンパク質の2D解析では、集団内および集団間で発現パターンの明確な違いが観察された。したがって毒液に含まれる毒液タンパク質の発現量の差異は、転写レベルでなく翻訳/修飾レベルで生じている可能性が示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Toxins
巻: 14 ページ: 300