研究課題/領域番号 |
18H02503
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野田 隆史 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (90240639)
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研究分担者 |
堀 正和 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(廿日市), 主任研究員 (50443370)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 群集動態 / 安定性 / 固着生物 / 潮間帯 / 海洋 / 共存機構 / 撹乱 / 地震 |
研究実績の概要 |
北海道から鹿児島の太平洋沿岸(北海道東部、北海道南部、三陸、房総、南紀、大隅)の6地域、5海岸、5岩礁の計150岩礁において、自然撹乱を模した遷移区(人工裸地)とその対照区(無操作区)で300調査区で固着生物の群集動態データを収集するために、連携研究者と研究分担者と協力して野外調査を行った。 北海道東部の対照区から得られた、2003年から2019年までの固着生物群集の時系列データを用い、この地域の岩礁潮間帯固着生物群集における2種の優占種(フクロフノリとキタイワフジツボ)の個体群動態パラメータ(内的自然増加率、種内競争と種間競争の強度)の空間変異性を解析した。その結果、両種とも種内競争と種間競争の強度は、自種の内的自然増加率の増加と共に低下する一方で、競争相手であるもう一方の種の内的自然増加率とはほとんど独立であることが明らかになった。また、いずれの種でも種内競争の強度は、その種がもう一方の種に及ぼす種間競争の強度よりも10倍程度強いこと、そのような種内競争の種間競争に対する卓越性は、2種の内的自然増加率の広範な組み合わせで一貫していることが明らかになった。このような個体群動態のパラメータ間の相互関連性のパターンは、2種の共存において安定化メカニズム(ニッチの違い)が特に重要であること、また、一方の種の内的自然増加率が低く、もう一方の種の内的自然増加率が低い場所では、両種の共存可能性が低下する(内的自然増加率の高いほうの種による競争排除が生じやすい)可能性を示している。 また、2003年から2019年までの固着生物群集の時系列データを用い、北海道東部における外来フジツボの個体群動態の長期変動と三陸における東北地方太平洋沖地震後の固着生物群集の優占種の個体群動態の長期変化を明らかにし、それぞれ査読制の国際学術雑誌に論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学および関連施設より、新型コロナウィルス感染症対策に関連した研究活動の抑制についての要請があり、一部の野外調査は実施できなかった。しかし群集構成種のアバンダンスの経年変化を定量評価するために最低限必要な夏季のデータはすべての地域で収集できた。 また、一部の地域から得られた固着生物群集の時系列データを用い、2種系の種間相互作用の空間変異性と環境特性の関係を評価する新たな解析を行うことができた(具体的成果は上述の研究実績の概要を参照)。そして、得られた成果を論文としてまとめ、学術誌に投稿することができた。 また、昨年度の「研究実績の概要」に掲載した研究をさらに進展させ、全6地域における固着生物群集の安定性に及ぼす海流系の影響を詳しく検討した解析を加えた研究結果を論文にまとめ、学術誌に投稿することができた。 さらに、一部の地域においては、群集構成種の個体群動態の長期変動について進めた解析結果をまとめ、2報の学術論文として発表することができた(具体的成果は上述の研究実績の概要を参照)。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、野外調査を継続することで、北海道から鹿児島の太平洋沿岸の6地域、5海岸、5岩礁の計150岩礁において、自然撹乱を模した遷移区(人工裸地)とその対照区(無操作区)で収集した300例の20年の固着生物の群集動態データを構築する。得られたデータを用い、群集動態の安定性の4要素(変化速度、工学的弾性、生態学的弾性、発散/収束性)がさまざまな空間スケールでどのように空間変異するのか?その空間変異の仕方は群集の撹乱履歴(撹乱からの経過時間)や稀少イベント(稀な自然撹乱や外来種の侵入)、環境要因(波あたりと気候)、種プール特性(種多様性と種構成)、によってどのように決まるのか?を明らかにする。
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