研究課題
本研究は、適応と生殖隔離の両方に作用する「魔法形質」としてすぐれて単純な機構であるカタツムリの巻型の進化を、分子生態学的アプローチと数理生物学的アプローチによって深く追究することを目的とする。これまでに、台湾南東部において実施した広域の細密サンプリングによって収集した約1500サンプルに対し、ゲノムワイドなSNPジェノタイピング手法であるMIG-seq法によって膨大なシーケンスデータを取得している。また、共同研究によって進めてきたde novoアセンブリーが完了したことを受け、そのドラフトゲノムに対してマッピングをおこない、多数のSNPデータを得ることができた。前年度までに判明したサンプルの取り違え等の問題を解決した後、各集団から一個体ずつを用いた全体の系統解析をおこなった。iqtree2を用いた最尤法による解析の結果、区別されるべきサブ系統樹の位置と範囲が決定され、系統関係と分布の重複から興味のもたれる局所集団の特定が進んだ。この過程において、地理的に共存する右巻き・左巻き集団間における遺伝子流動の有無と規模をADMIXTURE解析によって解明してきたところ、予想外なことに、ある同所的な右巻きと左巻きの二種間では遺伝的な分化が見られず、ひとつの生物学的種であることが示された。次に、代表的な集団からそれぞれ一個体ずつ選択した31個体(右巻き15個体、左巻き16個体)に対して実施したリシーケンスのデータ解析を進めた。具体的には、前述のde novoゲノムにリシーケンスデータをマップすることで得られたSNPに対してPLINKを用いたGWASを実施した。その結果、サンプル数とSNP数の兼ね合いから統計的に顕著なシグナルを検出するには至らなかったものの、強い相関を示すSNPの集中する領域を発見することができた。今後、その領域に存在する遺伝子を候補として機能解析を実施していく予定である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 6件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 118 ページ: e2022754118
10.1073/pnas.2022754118
Communications Biology
巻: 4 ページ: 49
10.1038/s42003-020-01587-9
Biological Journal of the Linnean Society
巻: 133 ページ: 143~154
10.1093/biolinnean/blab033
Molecular Ecology
巻: 30 ページ: 1939~1942
10.1111/mec.15896
The American Naturalist
巻: 196 ページ: 690~703
10.1086/711311
Trends in Ecology & Evolution
巻: 35 ページ: 897~907
10.1016/j.tree.2020.05.011
保全生態学研究
巻: 25 ページ: 1~14
10.18960/hozen.1933
FEMS Microbiology Ecology
巻: 96 ページ: fiaa202
10.1093/femsec/fiaa202
Frontiers in Plant Science
巻: 11 ページ: 576140
10.3389/fpls.2020.576140
Nature Communications
巻: 11 ページ: 2885
10.1038/s41467-020-16679-7
New Phytologist
巻: 227 ページ: 1872~1884
10.1111/nph.16647
巻: 29 ページ: 3071~3083
10.1111/mec.15415
Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences
巻: 375 ページ: 20190548
10.1098/rstb.2019.0548