研究課題/領域番号 |
18H02511
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久米 篤 九州大学, 農学研究院, 教授 (20325492)
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研究分担者 |
奈佐原 顕郎 (西田顕郎) 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40312813)
富田 祐子 (半場祐子) 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (90314666)
秋津 朋子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (90590597)
後藤 栄治 九州大学, 農学研究院, 助教 (90614256)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分光吸収特性 / 光合成 / 直達・散乱日射 / 光合成色素 / 放射測定 / 系統進化 / UV-A |
研究実績の概要 |
本研究は、1)直達・散乱日射スペクトルの野外観測と、2)各植物群の吸収スペクトル測定と葉構造・葉緑体特性の進化段階別比較、そして3)各植物群の代表種による光の方向性別生育比較が3つの大きな研究の柱となっている。 1)日射スペクトル観測については九州大学農学部屋上への設置が許可され、ほぼ理想的な測定環境が得られた。設置後はシャドーバンドシステムの運用は順調に進んでおり、精度検証の結果も良好であった。ただし、市販の紫外線(UV-A)センサが適切に測定できない仕様であることが判明し、製造元の対応も不十分であったため、業者から別仕様のセンサを提供してもらうことになった。UV域の放射センサの中には不適切な仕様で設計され、不適切な校正法で出荷されている製品があることが明らかになった。 2)シダ植物で、系統的に離れた種間の葉内構造と葉緑体の大きさ・形状を比較し、分光吸収・反射特性を測定した。その結果、シダ植物の葉内構造は種子植物と比較すると非常に多様で葉断面構造や葉緑体の性質も多様化していることが示唆された。また、裸子植物ではナンヨウスギ系の針葉樹やソテツなどで測定・評価を行った。その結果、被子植物では分光スペクトル的に顕著な収斂進化が生じているのに対して、裸子植物では、多様化が生じており、葉の内部構造と関連していることが示唆された。針葉樹葉の色素定量については、スギにおいてDMFを利用した測定方法を確立した。 3)栽培比較実験を行わない事にしたが、同一条件で12種のシダを栽培し、葉の形質測定や光学特性の測定を行った。ヒメツリガネゴケを利用した高CO2条件下での栽培については、近接リモートセンシングによる輪郭判別などの技術を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、観測機器の設置装置の制作を依頼した業者が、打合せ時に分光放射計を落下させて破損したため、9月に入るまで放射観測が実施できなかった。結果的に、観測開始が予定よりも1年半近く遅れることになった。一方、稼働後の測定は非常に順調であり、ほぼ理想的な条件でデータが取得できている。 また、紫外放射測定用のUV-Aセンサの精度検証を行ったところ、測定値が不合理であったっため、メーカーに問い合わせたが適切な回答が得られなかった。そこで、検証作業を行い、そのメーカの製品が野外で測定できない仕様であることを実証した。現在、納入業者と協力して別のセンサの検証を進めている。こちらについては、今年度から野外設置できそうな見込みである。 葉の分光放射吸収特性の測定は分光計を調整し,積分球のキャリブレーションを高精度に行えた。このシステムを利用してシダ12種および他の数樹種について光合成・分光特性の測定を行なった。葉内構造解析も進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
1)進化段階別の葉の分光吸収特性の解析を行い、針葉樹については、南方系・北方系の系統を考慮した光合成部位の分光特性、葉緑体運動特性を評価する。また、常緑広葉樹、特にマングローブ樹種について分光特性を評価する。シダ類については、系統を意識した、光合成特性、分光特性、葉緑体運動特性の評価を行う。各種の葉の吸収特性については、今年度中に論文投稿する予定。 2)伊都キャンパス・立山、全天から林床・雪中まで、様々な環境における分光日射測定を実施する(UV-A含む)。ただし、コロナウィルスの影響で実施が難しい可能性がある。日射の分光特性については、今年度中に論文投稿する予定。 4)植物葉また風媒花のクロロフィル・キサントフィル・カロテノイドを定量する。 5)近接リモートセンシングを利用した、植物表面吸収特性の評価法を開発する。特に、ヒメツリガネゴケコロニーの生育状態評価技術を確立する。
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