研究課題
本研究は、1)直達・散乱日射スペクトルの野外観測と、2)各植物群の吸収スペクトル測定と葉構造・葉緑体特性の進化段階別比較、そして3)各植物群の代表種による光の方向性別生育比較が3つの大きな研究の柱となっている。1)日射スペクトル観測については九州大学農学部屋上で観測を行い、ほぼ理想的な測定データが得られた。設置後の運用は順調で、精度検証の結果も良好であった。火山噴火や黄砂の影響も確認できた。一方、市販の紫外線センサの中には野外で測定には不適切な仕様で設計され、散乱放射の評価において校正法に問題があると考えられる製品があることが明らかになった。2)系統的に離れた植物種間の葉内構造と葉緑体の大きさ・形状を比較し、分光吸収・反射特性・光合成特性を測定した。種の分岐年代が異なる12種のシダ植物を温室内で栽培し、成熟した葉を用いて葉の内部構造と光利用特性との関係を調査した結果、分岐年代が新しい種ほど緑色光と赤色光の吸収率が高く、葉緑体表面積は大きくなる傾向にあり、シダ植物は進化に伴って内部構造と光利用機構を並行的に変化させてきたことが示唆された。また、裸子植物ではナンヨウスギ系の針葉樹やソテツなどで測定・評価を行った。その結果、被子植物では分光スペクトル的に顕著な収斂進化が生じているのに対して、裸子植物では、多様化が生じており、葉の内部構造と関連していることが示唆された。3)栽培比較実験を行わない事にしたが、同一条件で12種のシダを栽培し、葉の形質測定や光学特性の測定を行った。ヒメツリガネゴケを利用した高CO2条件下での栽培については、近接リモートセンシングによる輪郭判別などの技術を開発した。さらに、風媒花植物の花色の変化について日射スペクトルの観点から解析し、吸収エネルギーと花色、そして花温度との関係をモデル計算し、花色の変化が熱収支で説明できることを示した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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