研究課題/領域番号 |
18H02513
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
石川 尚人 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生物地球化学プログラム), 研究員 (80609389)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 放射性炭素 / 窒素同位体比 / グルタミン酸 / フェニルアラニン / メチオニン |
研究実績の概要 |
本研究は、豊かな生物多様性や生態系機能と密接に関わっている海洋沿岸域から採集した、環境生物試料のアミノ酸の窒素安定同位体比(δ15N)および放射性炭素天然存在比(Δ14C)を測定することにより、沿岸生態系の生物生産に果たす陸域起源物質の役割を解明することを目的とした。これまでに、アミノ酸のδ15N, Δ14Cを分析する方法論を確立し、学術誌に発表した。まず、従来利用されてきたグルタミン酸とフェニルアラニンのδ15Nに加え、新たにメチオニンのδ15Nを測定することにより、陸域-水域混合系で生物の栄養段階を推定する方法論を開発した。モデルとした河川の捕食性水生昆虫の栄養段階は、混合を考慮しない従来法で過小評価された。一方で、メチオニンを加えた三種類のアミノ酸δ15Nから、陸域・水域食物網の混合割合を求めることで、生態学的に妥当な栄養段階の推定が可能となることが分かった。この新手法は、餌資源の同位体比を測定せずとも、研究対象の生物の栄養段階推定が可能という、従来法の利点を損なうことなく、かつその応用範囲を混合系へと拡張できるようになった点において、極めて画期的である(Ishikawa et al. 2018a Limnology and Oceanography: Methods)。また、アミノ酸のΔ14C分析については、高速液体クロマトグラフィーによって各アミノ酸を単離し、さらに湿式操作による精製処理を施すことで、従来法を用いた場合の不純物の混入量を、最大で約7割減らせることが分かった(Ishikawa et al. 2018b Analytical Chemistry)。これらの方法論に基づいて、生物試料の処理、分析を行った。なお、当初は海外での分析を想定していたが、国内で同様の分析を行った。今後、分析結果をまとめた論文を執筆し、学術誌へ投稿する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の遂行にあたって、まず分析法の確立が必要不可欠である。これまでに、アミノ酸のδ15N, Δ14Cを分析する方法論を確立し、学術誌に発表した(Ishikawa et al. 2018a Limnology and Oceanography: Methods; Ishikawa et al. 2018b Analytical Chemistry)。これらの方法論に基づいて、生物試料の処理、分析を行ったところ、一部で予想とは異なる意外な結果が得られており、今後詳しく解析していく。研究全体として、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
生物試料の分析結果をまとめた論文を執筆し、学術誌へ投稿する。本研究が完成することで、生態学、地球化学、そして水産学といった複数の学術分野に対して、重要な知見を提供できる。
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