研究実績の概要 |
現代日本人の祖先集団は、先住民である縄文人と大陸からの渡来人という2つの集団に分かれる。現在の日本人集団の形成過程を解明するために、要約統計量であるancestry-marker index(AMI)を用いて祖先集団に由来する変異をりふぁんれんすゲノムを私用せずに検出する方法を開発した。本手法を用いて、縄文人に由来すると思われるSNP(縄文人由来変異)を208,648個同定した。現代日本人10,842人について縄文人由来の変異を解析したところ、縄文人との混血比率は都道府県によって異なることが明らかになった。また、現代日本人の祖先集団におけるゲノムワイドSNPの推定対立遺伝子頻度から、祖先集団のそれぞれの生業に適応したと思われる表現型が示唆された。以上を踏まえて、縄文人と大陸系東アジア人の混血比率の地域差によって、現在の日本列島集団の遺伝子型と表現型のグラデーションが形成されるという、現代日本人の形成モデルを提案することができた。 日本の各地域・都道府県の平均縄文アリルスコア(JAS)を算出した。JASは沖縄が最も高く、次いで東北、関東、近畿が最も低く、次いで四国であった。 次に、JASと縄文時代の人口規模に関連する3つの指標との相関を検討した。各県のJASは縄文時代の遺跡数と有意な相関があった。また、各地域のJASは縄文時代晩期の遺跡数から推定される人口規模とも相関があった。さらに、各県のJASはlog10(弥生時代の遺跡数/縄文時代晩期の遺跡数)と強い相関があった。各地域のJASと人口規模の相関から、縄文時代の人口規模が小さいほど、現代の日本本土のJASは低いことが示唆される。以上のことから、現代日本人の地域集団の遺伝的勾配は、縄文時代末期から弥生時代にかけての各地域の人口規模の違いによる、おそらく縄文人の混血割合の違いが主因であると結論した。
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