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2018 年度 実績報告書

血液脳関門透過AAVベクターを用いたレット症候群の遺伝子治療とMeCP2機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 18H02521
研究機関群馬大学

研究代表者

平井 宏和  群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70291086)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードMeCP2 / 自閉症
研究実績の概要

メチル化CpG結合タンパク質2 (Methyl CpG binding protein 2: MeCP2)は生後の脳の発達に重要な遺伝子で、MeCP2遺伝子の突然変異や重複は自閉症、てんかん、失調性歩行、特有の常同運動(てもみ動作)を特徴とするRett症候群、MeCP2重複症候群を引き起こす。MeCP2はニューロンとアストロサイトの両方で、脳の発達に重要な役割を果たすことは報告されている。本研究では成熟マウスをターゲットとして1. ニューロン特異的、あるいはアストロサイト特異的にMeCP2を過剰発現するMeCP2重複症候群モデルを作成し、運動機能や社会行動に障害が出るのかを解析する。
方法:ニューロン特異的NSEプロモーター、あるいはアストロサイト特異的GFAPプロモーター制御下で、MeCP2とGFPを発現するAAV-PHP.B(マウスの血液脳関門を効率的に透過する)を静脈投与した。投与4週後に運動機能と社会行動をそれぞれ、ロータロッドと3チャンバーテストにて評価した。その後、マウスをサクリファイスし、MeCP2発現の程度をGFP蛍光で評価した。未処置のマウスをコントロールとした。
結果:コントロール群と比較し、ニューロン特異的なMeCP2の過剰発現(MeCP2OE-N)群、アストロサイト特異的なMeCP2の過剰発現(MeCP2OE-A)群ともにロータロッドでは有意な差は見られなかった。3チャンバーテストではMeCP2OE-A群はコントロール群と有意な差は認めなかったが、MeCP2OE-N群では有意な差を認め、社会行動に障害が生じていると考えられた。全脳を実体蛍光顕微鏡で観察したところ、MeCP2OE-N群では強いGFP蛍光が観察された。これに対しMeCP2OE-A群ではGFP蛍光は認められたものの、かなり発現が弱いことがわかった。
以上より、ニューロンにおいてMeCP2が過剰に発現すると成熟脳でも機能障害の原因となり、社会行動に障害を示すことが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の予定では、MeCP2を欠損し自閉症様行動や運動失調を示すレット症候群モデルマウスに、開発したMeCP2発現AAVベクターを静脈投与することで、進行性に悪化する症状を回復できるか検証することを目的としていた。しかし、MeCP2欠損マウスを得るのに時間がかかり、実験を開始するのが遅れた。そこで2年目以降の研究計画を前倒しで行うこととした。
2年目以降は、成熟したMecp2のfloxedマウスに、細胞種(プルキンエ細胞、バーグマングリアなど)特異的にCreを発現するAAVベクターを投与し、細胞種特異的にMeCP2を欠損させ、成熟脳におけるMeCP2の役割を明らかにすることを計画していた。そこで細胞種特異的にCreを発現するAAVベクターをMecp2のfloxedマウスに投与し、脳を観察したところ、細胞種特異的な発現が全く見られなかった。なぜこのようなことになったのか深く検討した結果、Creがわずかでも発現すると組み換えが起こることが原因と考えられた。すなわち、細胞種特異的プロモーターといっても完全ではなく、他の細胞種でもわずかに発現がみられる。通常わずかであればほとんど問題にならないが、Creリコンビネースはそのわずかでも活性をもつことが問題であったと推測された。そこで、方針を変更し細胞種特異的プロモーター制御下でMeCP2を過剰発現する重複症候群のモデルを解析することとした。またプルキンエ細胞特異的なMeCP2欠損は試行錯誤を行い、プルキンエ細胞特異的L7-6プロモーター制御下でCreを発現するAAVベクターを直接、Mecp2のfloxedマウスの小脳に注入するとうまく行くことがようやくわかったので、2年目に行うこととした。

今後の研究の推進方策

小脳プルキンエ細胞にはMeCP2が豊富に発現している。そこで、プルキンエ細胞特異的にMeCP2を欠損させて、その影響を解析することで成熟後のプルキンエ細胞におけるMeCP2発現の生理学的意義を明らかにする。プルキンエ細胞特異的L7-6プロモーター制御下でCreを発現するAAVベクターを直接、成熟後のMecp2 floxedマウスの小脳に注入し、プルキンエ細胞特異的にMeCP2発現を欠損させる。このマウスの運動機能と社会行動性を、それぞれロータロッドと3チャンバーテストで解析する。また、MeCP2を欠損したプルキンエ細胞の形態、および機能を免疫組織染色法とパッチクランプ法を用いて解析する。以上を通じて、成熟後もプルキンエ細胞に発現し続けているMeCP2の生理学的意義を明らかにする。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Effects of neutralizing antibody production on AAV-PHP.B-mediated transduction of the mouse central nervous system.2019

    • 著者名/発表者名
      Shinohara Y, Konno A, Nitta K, Matsuzaki Y, Yasui H, Suwa J, Hiromura K, Hirai H.
    • 雑誌名

      Molecular Neurobiology

      巻: 印刷中 ページ: -

    • DOI

      10.1007/s12035-018-1366-4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ウイルスベクターの静脈投与によるマウス脳全域への遺伝子導入2019

    • 著者名/発表者名
      今野歩, 平井宏和
    • 雑誌名

      実験医学

      巻: 37 ページ: 581-587

  • [学会発表] Mouse strain-dependent BBB (blood-brain barrier) permeability of AAV-PHP.B.2019

    • 著者名/発表者名
      Yasunori Matsuzaki, Masami Tanaka, Sachiko Hakoda, Tatsuki Masuda, Ryota Miyata, Ayumu Konno, Hirokazu Hirai
    • 学会等名
      FAOPS2019
    • 国際学会
  • [備考] 群馬大学大学院医学系研究科脳神経再生医学分野

    • URL

      http://synapse.dept.med.gunma-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2020-03-17  

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