研究課題/領域番号 |
18H02522
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
石崎 泰樹 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90183003)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エクソソーム / 内皮細胞 / オリゴデンドロサイト / 脱髄疾患 / 再髄鞘化 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまでの研究成果を基盤に、脳微小血管内皮細胞(MVECs)移植により脱髄軸索の再髄鞘化が促進される分子機構を明らかにし、白質梗塞に伴う脱髄に対する治療戦略開発の基盤となる知見を獲得することを目的とする。さらに、他の脱髄疾患モデルを視野に入れ、この知見が白質梗塞のみならず脱髄疾患一般の治療戦略開発においても有効であるか否かを検証する。 血管内皮細胞由来のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs )生存促進因子の同定 ① 研究代表者はMVECs由来のエクソソームがOPCsの生存を促進することを明らかにしており、MVECsの培養上清からエクソソームを調製(エクソソーム回収用試薬を用いる遠心法、超遠心法、抗ホスファチジルセリン抗体を用いる遠心法の3通りの調製法を用いて)、その中に含まれるタンパク質を質量分析により分析、Rat-1由来エクソソームに比して有意に含量が多いものを候補分子として絞り込み、869個の候補タンパク質を得た。この中にOPCsの生存・増殖を促進することが知られているPDGFBが含まれていたので、Western blotting解析及びELISAを行ったところ、エクソソームにPDGFBが存在することが確かめられた(現在投稿準備中)。 ②MVECs由来エクソソームに含まれるmicroRNAを次世代シークエンサーにより分析し、Rat-1由来エクソソームに比して有意に含量が多いものを候補分子として絞り込む作業を行った。候補分子がいくつか浮上しているが、この中でOPCsに効果をもたらすことが報告されているものを重点的に検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の2つの目的のうち、「血管内皮細胞由来のオリゴデンドロサイト前駆細胞生存促進因子の同定」に関しては、血管内皮細胞由来エクソソームに存在するタンパク質の有力候補としてPDGFBを見出すことができた。これは大きな成果であると考える。また血管内皮細胞由来エクソソームに存在するmicroRNAに関しても候補分子の絞り込みに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
①血管内皮細胞由来のオリゴデンドロサイト前駆細胞生存促進因子の有力候補であるPDGFBが血管内皮細胞由来エクソソームのどこに存在するのか(小胞内か、小胞膜か)を免疫電顕で検証する。また抗PDGFB中和抗体を用いてエクソソームがOPCsに及ぼす効果が減弱するか否かを検討する。さらにエクソソームをOPCsに投与したときに、PDGFRのリン酸化が起きるかどうかを検討する。 ② MVECs由来エクソソームに含まれるmicroRNAを次世代シークエンサーにより分析し、Rat-1由来エクソソーム に比して有意に含量が多いものを候補分子として絞り込む作業を継続する。候補分子がいくつか浮上しているが、この中でOPCsに効果をもたらすことが報告されているものを重点的に検討する。 ③ ヒトiPS細胞を内皮細胞に分化させ、得られたiVECsをラット白質梗塞モデルの梗塞巣に移植し、MVECs同様の効果をもたらすか否かを検証する。これは当初の研究計画には無かったが、臨床応用を視野に入れて実施する。
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