研究課題
神経細胞間の情報伝達はシナプスで行われる。シナプス前部に活動電位が到達すると、細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇し、それが引き金となってシナプス小胞がシナプス前部アクテイブゾーンの細胞膜に融合することにより、小胞内に蓄えられている神経伝達物質のエキソサイトーシスが起こる。本研究では、シナプス前部からの高速で持続的な神経伝達物質放出を可能にしているシナプス小胞のエキソサイトーシスと小胞膜タンパク質のエンドサイトーシスによる細胞内への回収過程を、申請者らが開発してきた新蛍光ライブイメージング手法で研究することをめざしている。2018年度は、一シナプス小胞のエキソサイトーシスを検出する方法を確立した上で、エキソサイトーシスにより細胞膜へ移行した小胞膜タンパク質が細胞膜上で拡散により分散してから回収されるか、それとも分散せずに回収されるかを検討した。シナプス小胞膜タンパク質の一つであるシナプトフィシンにpH依存性蛍光タンパク質SEPを融合した分子は、細胞膜へ移行後に拡散することが明らかになった。次に、エキソサイトーシスが起こる部位はシナプス前部細胞膜上で決まっているか否か、またどのように分布しているかを検討した。そして、シナプス前部への活動電位到達直後に起こるエキソサイトーシスはシナプス前部アクテイブゾーン内の特定の数か所で起こるが、活動電位到達から数10ミリ秒以上遅れて起こるエキソサイトーシスはそれらとは異なる部位で起こることを明らかにした。これらの成果については、すでに論文発表した。また、小胞膜タンパク質のエンドサイトーシスを検出する方法の開発に着手した。
2: おおむね順調に進展している
一つのシナプス小胞のエキソサイトーシスの検出に成功し、シナプス前部でエキソサイトーシスが起こる部位の詳細を明らかにできた。また、シナプス小胞が細胞膜に融合した後のシナプス小胞膜タンパク質の挙動を明らかにできた。これらは、当初予定していた主要な研究目的である。
これまでの研究で、シナプス小胞のエキソサイトーシスに関する研究手法を確立し、その詳細について解析を行えたので、今後はシナプス小胞膜タンパク質の回収過程であるエンドサイトーシスの検出方法の確立をめざす。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Frontiers in Cellular Neuroscience
巻: 12 ページ: 1-10
10.3389/fncel.2018.00140
Journal of Neuroscience
巻: 38 ページ: 5523-5537
10.1523/JNEUROSCI.3210-17.2018
Nature Neuroscience
巻: 21 ページ: 1004-1014
10.1038/s41593-018-0173-6
Human Molecular Genetics
巻: 27 ページ: 3165-3176
10.1093/hmg/ddy219
Frontiers in Cellular Neuroscience.
10.3389/fncel.2018.00442
Cerebellum
巻: 17 ページ: 756-765
10.1007/s12311-018-0963-0
巻: 17 ページ: 699-700
10.1007/s12311-018-0985-7
http://www.neurosci.biophys.kyoto-u.ac.jp/main.html