神経細胞間の情報伝達はシナプスを介して行われる。シナプス前部への活動電位到達により細胞質内のカルシウムイオン濃度が上昇し、それが引き金となってシナプス小胞がシナプス前部アクテイブゾーンの細胞膜に融合して、小胞内に蓄えられている神経伝達物質のエキソサイトーシスが起こり、その後細胞膜に融合した小胞膜タンパク質はエンドサイトーシスにより細胞内に回収されて、シナプス小胞が再構築される。本研究では、シナプス前部からの高速で持続的な神経伝達物質放出を可能にしているシナプス小胞のエキソサイトーシスと小胞膜タンパク質のエンドサイトーシスによる細胞内への回収過程を、申請者らが開発してきた蛍光ライブイメージング手法で研究した。2018年度に一シナプス小胞のエキソサイトーシスを検出する方法を確立し、エキソサイトーシスにより細胞膜へ移行した小胞膜タンパク質が細胞膜上で拡散してから回収されることを、シナプス小胞膜タンパク質の一つであるシナプトフィシンにpH依存性蛍光タンパク質SEPを融合した分子を用いて明らかにした。そして2019年度に、細胞外液の急速交換法を用いることで、細胞外液のpHを100~200ミリ秒間で変化させる手法を用いて、SEP融合シナプトフィシンのエンドサイトーシスを検出する方法を確立した。2020年度はこの手法を用いて、シナプス前部の高頻度刺激の1秒以内から数秒以内に起こるSEP標識シナプトフィシンのエンドサイトーシスを記録し、その詳細を解析した。その結果、生体温近くでは高頻度刺激後1秒以内にアクテイブゾーン近傍でエンドサイトシスが起こるが、こうした早いエンドサイトーシスは室温では見られず、室温では刺激数秒後にエンドサイトーシスが起きた。以上のように、シナプス前部における複数のタイプのエンドサイトーシスをライブイメージングで記録することに成功した。
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