研究実績の概要 |
2019年度は、脳の中でも層構造が明瞭かつシンプルな利点を持つ歯状回における解析を中心に研究を進めた。PVニューロンが形成するGap junctionネットワークを神経回路に組み込む上で、PVニューロンの樹状突起への入力構造を定量的にとらえることが重要であるが、各種の軸索終末を標識する抗体で染色をすると、歯状回の各層ごとに分布が異なっており、それを用いて明瞭にsublayerを分けることができた。具体的には、従来から歯状回分子層がouter,middle,innerの3層に別れることが知られており、およそ1/3ずつの厚さで区分がなされてきたが、今回私はVGluT2の染色強度でouterとmiddleが区分でき、一方innerはVGluT2の染色性が欠如することで、客観的な同定に成功した。これらの区分は決して1/3ずつではなく、またGAD, calretinin, Zinc transporter 3などによるsublayer区分とよい一致を示した。次にVGluT2で区分した各sublayerごとに、大脳皮質由来のグルタミン酸シナプスの入力に対応するVGluT1,皮質下由来のグルタミン酸シナプス入力に対応するVGluT2、GABA作動性シナプス入力に対応するGADの三種類のマーカーでラベルされる軸索終末が、PVニューロンの樹状突起上にコンタクトする分布密度を定量した。同様の解析を、顆粒細胞層とhilusに伸びるPVニューロンの樹状突起についても行なった。 また光学顕微鏡レベルでのbouton contactが実際にシナプス入力と対応していることを確かめるためには電子顕微鏡観察が重要であるが、まずhilus領域におけるmossy fiber terminalとPVニューロン樹状突起間のシナプス形成の有無を免疫電子顕微鏡研究により検討し、豊富なシナプス入力の存在を確認した。
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