研究実績の概要 |
シナプス伝達・可塑性がシナプス前性のメカニズムによってどのように媒介されているかを明らかにすることを主要な研究目的として研究を進めている。本年度は、おもに苔状線維シナプス前終末を用いて、膜容量測定法と全反射蛍光顕微鏡を用いた研究をおこなった。(1)膜容量測定法を用い、Ca-伝達物質放出連関を測定した。シナプス小胞はいくつかの小胞プールの間を遷移するが、そのプールを分離した。また、細胞外からCaバッファを導入することにより、伝達物質放出、プール間の遷移速度、エンドサイトーシスのCa依存性について実測することが可能になった(論文準備中)。(2)全反射蛍光顕微鏡を用い、形質膜伝達物質放出部位付近のCaおよびシナプス小胞を50-100 nmの空間分解能で実測することが可能になった。この方法を用いて、Ca動態、シナプス小胞動態を測定した。また、シナプス小胞の動態がcAMPといったセカンドメッセンジャーによってどのような修飾を受けるかを調べ、詳細な解析をおこなった。
これ以外に、小脳、下丘のシナプス特性に関して以下の成果を得た。 (3)小脳プルキンエ細胞出力シナプスに関して、シナプス形成に細胞間マトリックスに関連するBral2が重要な役割を果たすことを電気生理学、遺伝学を用いて明らかにした(Edamatsu et al., 2018, J. Neurochem)。(4)下丘への入力シナプスに関して、その伝達特性を明らかにした(Kitagawa and Sakaba, in press)。
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