研究課題/領域番号 |
18H02535
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
六車 恵子 関西医科大学, 医学部, 教授 (30209978)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / iPS細胞 / プルキンエ細胞 / 大脳 / 小脳 / 神経分化 / 細胞脆弱性 |
研究実績の概要 |
神経変性疾患では、細胞の脱落および細胞死が特定の神経細胞種において生じるが、変性に至る細胞種がどのように規定されるのかについて、その機序は不明である。本課題では、「特定の神経細胞が生来有する脆弱性」と「罹患時における脳内環境の破綻状態」の組合せが、病型ごとに細胞特異的な変性をもたらす要因になりうるという仮説を立て、これを検証する。神経変性疾患特異的iPS細胞を活用し、「当該疾患で変性する細胞」と「当該疾患においては一次変性しない神経細胞」に分類し、これらをiPS細胞から分化誘導し、培養環境を脳内環境に見立て、細胞の表現型を解析する。具体的には、遺伝性脊髄小脳変性症のうち、小脳細胞に限局して変性が認められる「純粋小脳型」と、小脳以外の多領域・多細胞種に変性が生じる「多系統型」の病態を示す患者それぞれに由来するiPS細胞から、小脳プルキンエ細胞と大脳神経細胞を分化誘導し、形態学的解析と遺伝子発現解析を行った。純粋小脳型として、脊髄小脳変性症6型および31型由来のiPS細胞を用いたところ、疾患の標的であるプルキンエ細胞では、既報の通り、特殊な培養環境において細胞脆弱性を示した。一方、実際の病態では一次変性がほとんど認められない大脳神経細胞においても、健常者由来iPS細胞から分化した大脳神経細胞に比べ表現型に差が認められた。このことは、神経細胞種にかかわらず脆弱性を有するが、脳内環境によってはその表現型が病態として現れる場合と現れない場合がある、という可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題に用いる疾患特異的iPS細胞はすでに作製済みであり、分化誘導方法も開発済みであったため、研究実施が滞ることなく遂行できている。得られた表現型は仮説の確からしさを裏付けており、今後は本モデルによる細胞機序の解明のための研究を推進できるため。
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今後の研究の推進方策 |
仮説を検証するためのモデル化をさらに進める。また、他の病型由来iPS細胞を用いた細胞脆弱性の表現型解析を実施し、遺伝子変異と生来の細胞脆弱性、細胞種特異性と環境変化に対する脆弱性について相関を求める。
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