研究課題/領域番号 |
18H02536
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
山形 要人 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 分野長 (20263262)
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研究分担者 |
平井 志伸 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 主任研究員 (00625189)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 記憶痕跡細胞 |
研究実績の概要 |
1)結節性硬化症(TSC)モデルマウスのスパイン形態変化と記憶障害 TSCモデルマウスのスパイン形態異常に関わる分子を以前に同定している。そこで、遺伝学的にこれらの分子を減少させることにより、TSCモデルの記憶障害が改善するかどうかを検討した。すなわち、Tsc2+/-マウスをsyntenin+/-やRheb+/-マウスと交配し、synteninやRheb量を減らすことにより、Tsc2+/-マウスの文脈記憶が回復するかどうかを調べた。SynteninやRhebをヘテロ欠損させることにより、Tsc2+/-マウスのスパイン形態だけでなく、文脈記憶の障害も回復することを確認した。
2)記憶に関わる神経細胞(記憶痕跡細胞)の同定 神経活動依存的にEGFPを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)を作製し、野生型マウスとTsc2+/-マウスの海馬歯状回に注入した。その後、ドキシサイクリン(Dox)餌でEGFPの発現を抑制しておき、フットショック前に普通餌に変え、フットショック後Dox餌へ戻すことにより、記銘時に活動したニューロンにEGFPを発現させた。翌日、それぞれのマウスに記憶を想起させ、潅流固定後、海馬切片をc-Fos抗体により免疫染色した。EGFPで標識され、c-Fosも誘導された(EGFP(+)/c-Fos(+))ニューロンが記憶痕跡細胞と考えられるので、その割合をEGFP(-)/c-Fos(+)ニューロン(非痕跡細部)と比較したところ、野生型では痕跡細胞の割合が有意に高かった。しかし、Tsc2+/-マウスでは両者の割合に差がなく、回路の異常により記憶痕跡細胞が出来ないため、Tsc2+/-マウスの記憶が障害されていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた実験が終了し、期待通りの結果が出ているため。
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今後の研究の推進方策 |
記憶痕跡細胞の同定法がほぼ確立できたため、今後は樹状突起スパイン形態を痕跡細胞と非痕跡細胞間で比較する。すなわち、野生型マウスの痕跡細胞特異的に、スパイン形態変化が生じているかどうかを検討する。もしそれが確認されれば、今度はTsc2+/-マウスの痕跡細胞を非痕跡細胞と比較する。 痕跡細胞特異的なスパイン形態変化が確認されたら、次に野生型マウスとTsc2+/-マウスに溶媒あるいはRheb阻害薬をそれぞれ投与する。そして、記憶痕跡細胞の割合やスパイン形態変化を、野生型ー溶媒・野生型ーRheb阻害薬・Tsc2+/-ー溶媒・Tsc2+/-ーRheb阻害薬の4群間で比較する。この解析により、Rheb阻害薬がTsc2+/-マウスの痕跡細胞やスパイン形態を回復させるかどうかが明らかになる。
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