研究課題/領域番号 |
18H02537
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
岡戸 晴生 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, プロジェクトリーダー (60221842)
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研究分担者 |
平井 志伸 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 主任研究員 (00625189)
田中 智子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 研究員 (40578986)
新保 裕子 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 研究員 (50724663)
三輪 秀樹 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 室長 (80468488)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | RP58 / DNA修復 / 認知機能異常 |
研究実績の概要 |
RP58ヘテロマウスは加齢早期(4-5ヶ月令)での空間認知機能の低下、新たに脳波により「物体認識時のガンマ波の増加」が著明に減弱していることを見出した。また組織解析によりミクログリアの活性化を報告したが、同時にssDNA陽性のニューロンが増加していることを見出した。DNA修復マーカーであるガンマ H2AXも陽性であった。したがって、RP58ヘテロマウスでは、加齢早期に老齢期に見られる二本鎖DNA損傷が増加、あるいはその修復の低下が考えられる。そこでX線照射により人為的に2本鎖切断を誘発し、その修復過程を観察した。2本鎖切断のされやすさ、あるいは修復の低下が考えられた。RP58の発現低下が二本鎖DNA損傷を増加させるということは、体細胞変異による老化や発ガンに直接的に関与する可能性があり興味深い。またミクログリアの活性の異常亢 進を抑制するために離乳直後よりドキシサイクリンを投与すると、認知機能低下を防止し、RP58 変異による知的障害の治療法となる可能性があるので、ミノサイクリンでも確認中である。 RP58TetOマウスとActin-tTSマウスを交配することで、RP58発現が低下し、多動などの行動異常が確認された。さらに生後3Wまでドキシサイクリン含有えさで RP58の発現低下を抑制し、その後RP58を低下させたところ、物体位置認識異常が検出された。このことは、脳の形成以降のRP58の必要性を示している。さらに、CamK2-tTAを用いてRP58を増加させると認知機能が増加した。さらにAAVを用いて成体になってからRP58を増加させたところ、文脈記憶が増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RP58の発現量が認知機能を規定していることが変異マウスとウイルスベクターを用いた系で、共に実証されつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)RP58の発現低下でなぜDNA損傷が早期に強まるのか、その機序を明らかにする。特にROSの産生の変化を明らかにする。 (2)RP58 の低下によって、変化する転写産物を特定する。そのためにRNA-seqを行う。さらに、ニューロンでの変化を特異的に把握するために、HAtag付きリボゾーム蛋白をニューロンでのみAAVを用いて発現させ、免疫沈降させ、ニューロンでの特異的な変化を明らかにする。
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備考 |
東京都医学総合研究所ホームページ http://www.igakuken.or.jp/
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