研究課題/領域番号 |
18H02538
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
星野 幹雄 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 病態生化学研究部, 部長 (70301273)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経科学 / 発生・分化 / 解剖学 / 脳・神経 |
研究実績の概要 |
本研究は、小脳をモデル系として、神経前駆細胞(小脳の場合には顆粒細胞前駆細胞)が適切な時期に増殖を止めて、神経細胞(本研究では顆粒細胞)へと分化するしくみの解明を目指している。このしくみがうまくいかないと、小脳形成不全症となったり、あるいは顆粒細胞由来の癌である髄芽腫となってしまうため、その理解はとても大切である。 まず、我々は顆粒細胞前駆細胞および顆粒細胞において、転写因子Meis1が発現していることを見出した。Meis1はその下流で転写因子Pax6を活性化し、さらにその下でBMPシグナルの強度を調整することによって、顆粒細胞前駆細胞の未分化性を保っている転写因子Atoh1の分解に働くことを明らかにした。その結果として、顆粒細胞前駆細胞から顆粒細胞への適切なタイミングでの分化を担保していることを明らかにした。さらに、Meis1のスプライシングバリアントに注目した解析も行っている。その他、様々な転写因子、細胞周期制御因子、細胞内、細胞外シグナリング分子についても、特にin vivoエレクトロポレーション法を使って顆粒細胞分化に対する影響を調べており、多角的な結果をえつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、Meis1が顆粒細胞前駆細胞から顆粒細胞への分化について果たす役割を明らかにすることができた。次に、顆粒細胞前駆細胞から顆粒細胞への分化を制御する分子群を洗い出すことに傾注した。既存のweb上のデータベースや、過去のsingle cell RNA解析などのデータを集め、解析し、顆粒細胞前駆細胞や顆粒細胞あるいはその周辺で発現している可能性のある遺伝子・タンパク質を抽出した。それらの多くについて、発達途上の小脳の切片を用いて免疫染色をし、局在を調べた(論文投稿中)。その情報をもとにして、ノッチシグナル、細胞周期制御系、転写因子群、タンパク質分解系、などの遺伝子群について、発生途上の小脳顆粒細胞前駆細胞に対してin vivoエレクトロポレーション法を用いて強制発現、ノックダウンベクターを導入してその表現型を調べている。すでに多くの遺伝子について、多様で興味ふかい結果が得られてきている。本研究では4年の研究機関の間にそれらの結果を統合し、神経前駆細胞から神経細胞への分化に関わる普遍的メカニズムを明らかにする予定であり、現在までにおおむね順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き多種類の遺伝子の強制発現、ノックダウンベクターを導入して、その表現型について解析を続ける。さらに、一つの遺伝子の上流、下流にある可能性のある遺伝子を共導入し、シグナルの上下関係、共役関係についても検討する。さらに、顆粒細胞前駆細胞を精製した培養細胞を用いて、分裂回数やエピゲノム制御薬剤に対する影響についても調べる。また、顆粒細胞前駆細胞由来の癌である髄芽種についても、上記の遺伝子群の中から、増悪遺伝子、軽減遺伝子を同定し、病態の理解は創薬のターゲットの発見に務める。
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