研究課題/領域番号 |
18H02548
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
宮道 和成 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (30612577)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウイルス遺伝子工学 / ゲノム編集 / アデノ随伴ウイルス / トランスシナプス標識 |
研究実績の概要 |
膨大な種類のニューロンが複雑に接続した哺乳類の脳において,特定の神経機能に重要な要素を抽出するにはどうしたらよいだろうか? 本研究課題は,神経回路の構造を比較することによって機能的に重要な回路要素を抽出する“比較コネクトミクス”の実装を目的としている.この目的のために,逆行性の狂犬病ウイルスを用いたトランスシナプス標識やTRIO法を基軸に,CRISPRゲノム編集やインフォマティクスを組み合わせた解析プラットフォームの構築を目指している.初年度は,i) 神戸理研で初めて狂犬病ウイルスを用いたトランスシナプス標識を導入した,ii) トランスシナプス標識の起点となるstarter cellsを定めるための10系統近いCreトランスジェニック動物を導入し,安定に維持できる体制を作った,iii) 東京大学大学院医学系研究科/理研BDRの上田泰己博士らと共同で,トランスシナプス標識サンプルの全脳透明化,3D撮像,インフォマティクスのプラットフォームを構築した. 次に,ニューロンタイプ特異的なトランスシナプス標識の標的をマウス以外の哺乳類種に拡張するため,アデノ随伴ウイルスベクターを用いたノックイン型のCRISPRゲノム編集の技術開発を行った.初年度は i) マウスの運動野をモデルにユビキタスに発現するマーカー遺伝子座にCre組み換え酵素をノックインする技術の開発に成功した,ii)食肉目のモデル動物としてフェレットにおけるウイルス遺伝子工学系の立ち上げを行った.非遺伝学モデル動物において特定の細胞種を選択的に操作する系は,本研究の枠を超えて広範な応用範囲を有する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究室立ち上げの初年度においてコア技術としてウイルス遺伝子工学やトランスシナプス標識法の導入に成功し安定に稼働させている.トランスシナプス標識サンプルの大規模なインフォマティクス解析のためのプラットフォームが構築され,生物学的な問題にアプローチするために利用可能な状況になっている.アデノ随伴ウイルスベクター用いた組み換え酵素のin situノックイン技術の基盤開発が進んでおり,非遺伝学モデル生物としてフェレットにおける実験に着手できる状況になっている.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に構築したトランスシナプス標識法と複数サンプルのハイスループット比較解析プラットフォームを活用,神経回路における性差や妊娠に伴う変化を主に視床下部の特定のタイプのニューロンをモデルに解析する.必要に応じて,解析結果を補強するために,光遺伝学と電気生理学を組み合わせた神経接続の機能的な解析や,標識領域のトランスクリプトミクスを行う.アデノ随伴ウイルスベクター用いた組み換え酵素のin situノックイン技術を完成させ,マウスにおいて近年発見された神経修飾系の投射先選択的なサブタイプが広く進化的に保存されたものであるかどうか,他種において比較検討を開始する.
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