低分子創薬の主流は、阻害薬・作動薬・拮抗薬など、疾患関連タンパク質の機能制御である。しかし、この「鍵と鍵穴創薬」が通用しない疾患関連タンパク質については創薬成功例が少ないのが実情である。このことから、新しい低分子創薬技術の開発は、アンメットメディカルニーズや医療費高騰を解決する方策として、チャレンジングであるが重要な学術的課題である。本研究では、タンパク質を「タグ化」する分子の創製を通じて、疾患関連タンパク質の存在量・局在・翻訳後修飾などを人工的に制御することを示し、疾患関連タンパク質の機能を制御する「鍵と鍵穴創薬」とは異なる新しい創薬技術を複数提案することを目指す。 神経変性疾患は、疾患原因タンパク質の異常凝集により発症すると考えられている。異常凝集した疾患原因タンパク質に特異的に結合する神経変性疾患診断薬とユビキチンリガーゼリガンドを連結させた低分子が、ポリグルタミン病原因タンパク質のポリユビキチン化(タグ化)を人工誘導することにより、これらタンパク質(変異アタキシン3、変異アタキシン7、変異アトロフィン1)の存在量を低下させることを見出し、学会発表した。 オートファジータグと標的タンパク質リガンドを連結させた分子が、オートファジーを人工的に誘導するとの仮説のもと、9化合物を設計・合成した。慎重に再現性を確認する必要があるものの、生細胞中の標的タンパク質が減少した結果が得られている。
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