研究課題/領域番号 |
18H02551
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石川 稔 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70526839)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 翻訳後修飾 |
研究実績の概要 |
これまでの低分子創薬は、酵素阻害剤に代表されるように、疾患関連タンパク質の機能を制御する方法が主流であった。しかし、この創薬手法が通用しない疾患関連タンパク質も存在し、これらについては創薬の成功例が少ないのが実情である。そこで本研究では、タンパク質を「タグ化」する分子の創製を通じて、疾患関連タンパク質の存在量、局在、翻訳後修飾、生物活性などを人工的に制御し得ることを示し、酵素阻害薬などの従来の創薬手法とは一線を画す新しい創薬技術を提案することを目的としている。 神経変性疾患は、疾患原因タンパク質の異常凝集により発症すると考えられている。本来のタンパク質の機能ではなく、フォールディング構造が発症に関与するすることが、従来の創薬手法での成功例がない一因と思われる。本申請では、難病である神経変性疾患に対する創薬技術の提案を目指した。そして、神経変性疾患の原因となる凝集性タンパク質に対する人工的なタグ化を介して分解誘導する低分子が、生細胞中の変異アタキシン3、変異アタキシン7、変異アトロフィン1の存在量を減少させることを示した。このことから、開発した本手法により、神経変性疾患の原因となる凝集性タンパク質を一般性良く減少できる可能性が示唆された。本成果を論文発表(Bioorg. Med. Chem. 2020, 115175)した。更に、凝集性タンパク質を人工的にタグ化して分解誘導する本低分子を、中枢薬を目指して構造展開している。その結果、分子量を低減し、かつ水素結合の受容体数・供与体数を減少させた化合物でも同様の活性を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年4月に所属研究機関を異動したため、研究室メンバーが減り(8月まで自分一人、2月まで二人)、また研究環境を整える作業に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
凝集性タンパク質を人工的にタグ化して分解誘導する低分子の構造最適化を継続し、神経変性疾患に対する治療戦略の提案を目指す。具体的には、分子量、水素結合の受容体数・供与体数、分配係数などを指標として中枢薬らしい構造を目指し、凝集性タンパク質に対する結合部位の変換や、タグ部分の変換を実施する。また対象疾患としては、これまで検討していたポリグルタミン病以外の神経変性疾患に対する有効性も検討する。 疾患原因タンパク質を部位特異的に化学修飾する方法論を開発する。また、本方法論を用いて、タンパク質のリガンドスクリーニング法や、生物活性化合物の標的タンパク質同定法など、ケミカルバイオロジーの新しい方法論確立を目指す。 今年度は新たに、膜タンパク質のタグ化を介して分解誘導する化合物の検討を開始する。既に当該分子を設計し、評価方法も考案している。
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