低分子創薬の主流は、阻害薬・作動薬・拮抗薬など、疾患関連タンパク質の機能制御である。しかし、この「鍵と鍵穴創薬」が通用しない疾患関連タンパク質については創薬成功例が少ないのが実情である。このことから、新しい低分子創薬技術の開発は、アンメットメディカルニーズや医療費高騰を解決する方策として、チャレンジングであるが重要な学術的課題である。本研究では、タンパク質を「タグ化」する分子の創製を通じて、疾患関連タンパク質の存在量・局在・翻訳後修飾などを人工的に制御することを示し、疾患関連タンパク質の機能を制御する「鍵と鍵穴創薬」とは異なる新しい創薬技術を複数提案することを目指した。 オートファジーにかかわるタグと標的タンパク質リガンドを連結させた分子が、オートファジーを人工的に誘導するとの仮説のもと、新規化合物を設計・合成した。合成分子が、オートファジーを介して標的タンパク質の存在量を減少させる結果が得られた。また、タンパク質品質管理機構が認識する変性タグを標的タンパク質に連結した化合物を合成し、神経変性疾患の原因タンパク質を分解誘導できることを確認し、論文発表した。この他、タンパク質にタグを共有結合させる反応を開発し、その応用を検討している。共同研究により、タンパク質のアミノ酸残基選択的にタグを共有結合する方法論を開発した。この方法を用いて、凝集タンパク質を特異的にタグ化する技術を開発し、神経変性疾患に対する新しい創薬手法を学会にて提案した。 最後に、分泌タンパク質や膜タンパク質の人工的分解誘導を志向し、標的タンパク質を小胞体に局在させるよう、標的タンパク質のタグ化を誘導する化合物を合成し、この評価を実施している。
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