研究課題
本研究課題は生体内リガンドをミミックする分子を構築するための構造化の有機化学の確立とメディシナルケミストリーへの応用を目的とする。構造有機化学の基礎研究に加えて実際の生物活性物質の取得によって本研究の仮説を評価する。本研究の目的は以下の2つの問いについて有機化学的な見解を示すことにある。(1)タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)には表面にあるヘリックス間の相互作用に由来するものがあるが(例えば、MDM2-P53タンパク質相互作用など)、天然のヘリックス分子を模倣した非天然ヘリックス構造分子が、ピッチや直径という構造的なパラメーターが異なる場合でもPPIを阻害することが可能か、という問いについてである。また(2)回転しやすいアリル位炭素-炭素一重結合に由来する不飽和長鎖脂肪酸の多数のコンフォメーションを収集し分類し、特定構造を再現する代替構造分子設計法を確立し、脂肪酸の生物活性コンフォメーションを解明することは可能か、と言う問いである。(1)として、コンホメーション固定を起こすβプロリン誘導体である二環性骨格β―プロリンホモオリゴマーが動的固定によって作り出すヘリックス構造のN末端を最適化すると、MDM2-P53タンパク質相互作用を阻害することを解明した。相互作用はまだ弱いが、過剰のMDM2存在下でもp53に結合することから非天然ヘッリックもPPIに参加できる可能性を示した。また新たなPPI制御法を提案することに成功した。(2)の柔軟性にとんだDHAなどの不飽和脂肪酸のコンフォメーション空間を網羅的に加速MDによって発生し収集し類似性で分類し、その代表構造を優先的に取る有機分子をデザインしたい。有機合成化学的に取得可能な約30個の化合物を合成し検証したところ、代表構造の固定化の過程は科学者の勘におおいに依存することがわかったが、代表構造をミミックすることが可能であることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
進展は概ね順調であるが、生物実験は生化学者との共同研究で有り、自分たちで出来ないためいろいろな自由度の制限がある。共同研究は極めて順調に進んでいる。今後の論文化に時間が掛かる。
今後ともこのまま研究課題を継続して行く。今年度中に概ね成果を論文化することを目標にする。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Chirality
巻: 32 ページ: 790-807.
10.1002/chir.23220
Chemical Communications, 2020, 56,
巻: 56 ページ: 1573-1576
10.1039/C9CC08378B
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~yakka/index.html