研究実績の概要 |
異種の脂肪族アルデヒドを直接的かつ触媒的に炭素ー炭素結合で連結する不斉交差アルドール反応は、キラルな 1,3-ジオールを不斉構築する最も有望な方法の一つである。しかし、現在の有機化学では反応性の類似した異なるアルデヒドをエノール成分(アルドールドナー)とカルボニル成分(アルドールアクセプター)に識別できず、所望の交差体の他にホモアルドール体や望まない交差体が副生し複雑な混合物を与える。本研究は、この交差アルドール反応を触媒によりアルデヒドのわずかな反応性の差を見分けることで、精密に制御しようとするものである。 今年度は、軸性不斉を持つアニリン性酸塩基触媒存在下、カルボニル基の alpha-位に酸素を持つアルデヒドを含む交差アルドール反応を検討し、基質一般性を確認した。その結果、いずれの基質においても alpha-位に酸素を持つアルデヒドがアルドールアクセプターとなった交差アルドール体が、syn-体を主ジアステレオマーとして、高エナンチオ選択的に得られることを明らかにした (anti : syn, up to 1 :15, syn-isomer: up to 99% ee)。この反応では、2種類のアルデヒド基質を等量用いた場合でも、交差アルドール付加体が主に得られることが判明した。 この交差選択性の発現機構についても検討を加えた。その結果、本交差反応の生成物は熱力学的な生成物ではなく、速度論的な生成物であることを明らかにした。すなわち、本反応の交差選択性 (交差アルドール生成物:ホモアルドール生成物)は速度支配で決定されていることが判明した。また、触媒の non-linear effect は示さないことも確認した。すなわち、本交差アルドール反応の律速段階において、複数分子の触媒が同時に関与する可能性は少ないことが示唆された。
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