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2018 年度 実績報告書

脂肪族アルデヒドの直接的不斉交差アルドール反応の新展開

研究課題

研究課題/領域番号 18H02554
研究機関京都薬科大学

研究代表者

古田 巧  京都薬科大学, 薬学部, 教授 (30336656)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード交差アルドール反応 / アニリン / 触媒的不斉合成 / 軸性不斉 / 酸塩基触媒
研究実績の概要

異種の脂肪族アルデヒドを直接的かつ触媒的に炭素ー炭素結合で連結する不斉交差アルドール反応は、キラルな 1,3-ジオールを不斉構築する最も有望な方法の一つである。しかし、現在の有機化学では反応性の類似した異なるアルデヒドをエノール成分(アルドールドナー)とカルボニル成分(アルドールアクセプター)に識別できず、所望の交差体の他にホモアルドール体や望まない交差体が副生し複雑な混合物を与える。本研究は、この交差アルドール反応を触媒によりアルデヒドのわずかな反応性の差を見分けることで、精密に制御しようとするものである。
今年度は、軸性不斉を持つアニリン性酸塩基触媒存在下、カルボニル基の alpha-位に酸素を持つアルデヒドを含む交差アルドール反応を検討し、基質一般性を確認した。その結果、いずれの基質においても alpha-位に酸素を持つアルデヒドがアルドールアクセプターとなった交差アルドール体が、syn-体を主ジアステレオマーとして、高エナンチオ選択的に得られることを明らかにした (anti : syn, up to 1 :15, syn-isomer: up to 99% ee)。この反応では、2種類のアルデヒド基質を等量用いた場合でも、交差アルドール付加体が主に得られることが判明した。
この交差選択性の発現機構についても検討を加えた。その結果、本交差反応の生成物は熱力学的な生成物ではなく、速度論的な生成物であることを明らかにした。すなわち、本反応の交差選択性 (交差アルドール生成物:ホモアルドール生成物)は速度支配で決定されていることが判明した。また、触媒の non-linear effect は示さないことも確認した。すなわち、本交差アルドール反応の律速段階において、複数分子の触媒が同時に関与する可能性は少ないことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、交差アルドール反応の基質一般性の検討や反応機構解析などで順調に研究が進展した。一方、当初計画していた3成分連結型の交差アルドール反応への展開では、その反応自体を進行させる手がかりがつかめず、この点は研究の進展が見られなかった。これらを総合的に判断し、本研究は「おおむね順調に進行している」と判断した。

今後の研究の推進方策

現在のところ、本交差アルドール反応はカルボニル基の alpha-位に酸素を持つアルデヒドを含む反応系でのみ可能である。今後はこの基質の制限を改善するための検討を進める。例えば、反応性の高いアルデヒドであるアセトアルデヒドを基質に用いるアルドール反応を検討していく。さらに、反応を促進する添加剤の検討を進め、交差アルドール反応自体の収率の向上や、3成分連結型交差アルドール反応への端緒をつかむ。
また、触媒による分子認識を鍵として、 alpha-位に酸素を持つアルデヒド以外の基質でも交差アルドール反応を達成したい。このため、以前より継続的に検討してきた基質認識部を持つアニリン性酸塩基触媒の合成をさらに加速していく。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2018 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Design and synthesis of biaryl amino acids and related catalysts with molecular recognition properties2018

    • 著者名/発表者名
      Takumi Furuta
    • 雑誌名

      Journal of Synthetic Organic Chemistry, Japan

      巻: 2 ページ: 122-136

    • DOI

      10.5059/yukigoseikyokaishi.76.122

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Synthesis and Structural properties of axially chiral binaphthothiophene dicarboxylic acid2018

    • 著者名/発表者名
      Takuya Murai, Yongning Xing, Toshifumi Kuribayashi, Wenji Lu, Jing-Dong Guo, Ramesh Yella, Shohei Hamada, Takahiro Sasamori, Norihiro Tokitoh, Takeo Kawabata, Takumi Furuta
    • 雑誌名

      Chemical and Pharmaceutical Bulletin

      巻: 66 ページ: 1203-1206

    • DOI

      10.1248/cpb.c18-00668.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Intermolecular chemo- and regioselective aromatic C-H amination of alkoxyarenes promoted by rhodium nitrenoids2018

    • 著者名/発表者名
      Kenta Arai, Yoshihiro Ueda, Kazuhiro Morisaki, Takumi Furuta, Takahiro Sasamori, Norihiro Tokitoh, Takeo Kawabata
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 54 ページ: 2264-2267

    • DOI

      10.1039/C7CC09952E.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Direct asymmetric synthesis of alpha-deuterated alpha-amino acid derivatives from the parent α-amino acid via Memory of Chirality.2018

    • 著者名/発表者名
      Haruka Ohtsuki, Megumi Takashima, Takumi Furuta, Takeo Kawabata
    • 雑誌名

      Tetrahedron Letters

      巻: 59 ページ: 1188-1191

    • DOI

      10.1016/j.tetlet.2018.02.012.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Asymmetric synthesis of beta-lactams by intramolecular conjugate addition of serine and cysteine derivatives via Memory of Chirality2018

    • 著者名/発表者名
      Ryuichi Hyakutake, Tomoyuki Yoshimura, Yoshihiro Ueda, Kazuhiro Hayashi, Takumi Furuta, Takeo Kawabata
    • 雑誌名

      Heterocycles

      巻: 97 ページ: 1128-1147

    • DOI

      10.3987/COM-18-S(T)95

    • 査読あり
  • [学会発表] 不斉二核ロジウム触媒の開発-分子内C-H挿入反応を用いた置換 gamma-ラクトン類の不斉合成2018

    • 著者名/発表者名
      村井琢哉, 陸 文傑, 栗林俊文,Yongning Xing, 笹森貴裕, 時任宣博, 古田 巧, 川端猛夫
    • 学会等名
      第113回有機合成シンポジウム
  • [学会発表] 分子内軌道相互作用を有するナフトチオフェン型二核ロジウム触媒の開発-天然 gamma-ラクトンの不斉全合成-2018

    • 著者名/発表者名
      村井琢哉, 陸 文傑, 栗林俊文, 笹森貴裕, 時任宣博, 川端猛夫, 古田 巧
    • 学会等名
      第48回複素環化学討論会
  • [学会発表] 分子内S-O軌道相互作用を用いた構造制御-二核ロジウム触媒を用いた高立体選択的分子内C-H挿入反応の開発-2018

    • 著者名/発表者名
      村井琢哉, 陸 文傑, 栗林俊文, Yongning Xing, 郭 晶東, 浜田翔平, 笹森貴裕, 時任宣博, 川端猛夫, 古田 巧
    • 学会等名
      第68回日本薬学会近畿支部総会・大会
  • [学会発表] 脂肪族アルデヒドの分子間不斉交差アルドール反応-アセトアルデヒドへの展開-2018

    • 著者名/発表者名
      新宮るり, 渡邉勇氏, 田中雄也, 馬場智明, 浜田翔平, 川端猛夫, 古田 巧
    • 学会等名
      第68回日本薬学会近畿支部総会・大会
  • [学会発表] アリール型人工アミノ酸の創製を起点とした触媒開発2018

    • 著者名/発表者名
      古田 巧
    • 学会等名
      静岡県立大学薬学部大学院特別講義
    • 招待講演
  • [図書] "Biaryl amino acids and their surrogates : A unique class of unnatural amino acid" in Designed Molecular Space in Material Science and Catalysis2018

    • 著者名/発表者名
      Takumi Furuta
    • 総ページ数
      22
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      9811312559
  • [備考]

    • URL

      http://labo.kyoto-phu.ac.jp/yakka/

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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