研究課題
異種の脂肪族アルデヒドを直接的かつ触媒的に炭素-炭素結合で連結する不斉交差アルドール反応は、極めて有用な反応ながら、現在の有機化学では反応性の類似した異なるアルデヒドをエノール成分(アルドールドナー)とカルボニル成分(アルドールアクセプター)に識別できず、所望の交差体の他にホモアルドール体や望まない交差体が副生し複雑な混合物を与える。本研究は、この交差アルドール反応を触媒によりアルデヒドのわずかな反応性の差を見分けることで、精密に制御しようとするものである。昨年度までに、制御困難な反応として知られる脂肪族アルデヒドとアセトアルデヒドとの間の分子間交差アルドール反応を、当研究室で開発した軸性不斉アニリン性酸塩基を用いて検討した。その結果、3,5 位にトリフルオロメチル基が置換したフェニル基を持つアニリン性酸塩基触媒を用いると、71% 収率、74% ee で alpha-位に酸素を持つアルデヒドがアルドールアクセプターとなった交差アルドール体が得られることがわかった。最終年度となる今年度は、アルデヒドからケトンへと基質を展開し、ケトン-ケトン間の触媒的不斉交差アルドール反応を検討した。その結果、アニリン性酸塩基触媒では分子間、ならびにエノールエキソ型で進行する分子内アルドール反応のいずれも進行しないことがわかった。一方、5員環および6員環を形成するアルデヒド-ケトン間の分子内不斉アルドール反応は、アニリン性触媒でも進行しジアステレオ選択性に課題を残すものの、基質によっては 80% ee 程度のエナンチオ選択性で付加体を与えた。最後に、エノールエキソ型で進行するケトン-ケトン間の触媒的不斉アルドール反応については、触媒としてプロリン誘導体を用いることで反応が進行することがわかった。このうち、6員環環化の場合には高いジアステレオ選択性とエナンチオ選択性で2置換ピペリジン誘導体が得られた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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