研究実績の概要 |
1,8,13-トリス(トリアルキルシリル)トリプチセンのワンポット合成とその構造変換について検討を行った。まずイノラートと3-トリメチルシリリルベンザインとのトリプル環化付加反応の条件最適化を行い、40%を超える収率で該当するトリプチセンを得ることができた。この結果を基盤として、計7種類のトリアルキルシリルベンザインとイノラートの反応により、いずれも該当するトリストリアルキルシリルトリプチセンを単離することに成功した。これらのエックス線結晶構造解析により、嵩高いトリアルキルシリル基同士の立体障害によりトリプチセン骨格が歪んでいることが明らかとなった。とくにベンゼン環が最大で30度位以上も歪んでいることが分かった。 そこで歪の解消を駆動力とした特異な反応性を精査した。まずトリアルキルシリル基を足掛かりに官能基変換を検討した。トリメチルシリル基をハロゲン置換基へ変換する検討を行った。N-クロロコハク酸イミドやN-ブロモコハク酸イミドなどの求電子的ハロゲン化剤を反応させることで逐次的にハロゲン化することができた。反応の進行に伴い立体歪が順次解消されるために、反応速度が段階的に遅くなることがわかり、3つのトリメチルシリル基を任意のハロゲンに置換することができるようになり、キラルなトリプチセンの合成も可能となった。ハロゲンを導入したトリプチセンに対して鈴木カップリングや園頭カップリングを検討し、1,8,13位にアリール基など様々な置換基を有するトリプチセンの合成に成功した。 イノラートを用いたトリプチセンの合成をイプチセンの合成に適用する試みを行った。イノラートに対するベンザインダのブル付加反応を検討し、適切な等量規制を行うことでアントラセノキシド中間体が生成することを確認することができた。これに対してトリプチセンアラインを反応させたところ、ペンチプチセンを合成することに成功した。
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