研究課題/領域番号 |
18H02557
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
新藤 充 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (40226345)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トリプチセン / イノラート / 環化付加反応 / 酸化反応 / 環歪 / 脱ベンジル化 / ジメチルスルホキシド |
研究実績の概要 |
1,8,13-トリストリアルキルシリル(トリシリル)トリプチセンのワンポット合成とその構造変換について引き続き検討を行った。イノラートと3-トリメチルシリルベンザインとのトリプル環化付加反応でトリシリルトリプチセンを合成した。これらのエックス線結晶構造解析により判明したベンゼン環の歪に着目し、その歪エネルギー解消を駆動力とした特異な反応性を精査した。まずトリメチルシリル基をハロゲン置換基へ変換し、次いで鈴木カップリング、園頭カップリング等を行い、1,8,13位にアリール基、アルキニル基、ホルミル基など様々な置換基を有するトリプチセンを合成した。このトリプチセンの1,8,9,13位は同一平面上に存在し、その内1,8,13位は正三角形を形成しその中心に9位がある特徴的な構造である。さらに、1,8,13位の置換基はその平面から垂直に立つという特性がある。そこで、二つのトリプチセンを1,8,13位にリンカー(柱)で結合した「トリプチセンで挟まれたかご分子」の合成を検討した。種々検討の結果、アミノ基とホルミル基との脱水縮合によりかご分子を収率よく合成することに成功した。その過程で、ベンジルアミノ基をジメチルスルホキシド(DMSO)中で加熱するとイミノ基に酸化される新反応を見出した。本反応を精査し、ベンジルアミンの酸化的脱ベンジル化反応として確立することができた。この反応では酸触媒を加えることで反応加速がみられたことから、アンモニウム塩に対してDMSOが求核置換し、生じたスルホニウムから酸化反応が進行しベンズアルデヒドとアミンが生成したと考えられる。 トリプル環化付加反応の中間体であるアントラセノキシドを別途合成し、ベンザインとの環化付加を試みたところアントラセンよりも反応性、収率ともに良好であることを見いだした。キラルトリプチセンの合成とその光学分割についても予試験ではあるが成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
かご分子の合成が想定よりも良い効率で合成することができた。またそれに付随して新たな酸化反応を見出すことができた点で計画以上の進展が見られた。キラル化合物の合成および新反応の開発を伴う新たな変換反応も予備的な実験で見出している。
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今後の研究の推進方策 |
かご分子の合成に関してはその空孔の拡張を目指す。イプチセンを土台とするか、柔軟なリンカーによる空孔の柔軟化などの分子設計、合成を行う。そのうえで、分子認識、包接など機能の探索を行う。 トリプチセンをテンプレートとする大環状化合物の合成を検討する。すでに予備試験により環状ポリフェニレンの合成が確認されている。 キラルトリプチセンの光学分割もしくは不斉合成についてさらに精査して、その機能についても検討を始める。
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