トリプチセンの構造変換。1,8,13-トリシリルトリプチセンの歪みエネルギーを利用したハロゲン化反応により、自在に、塩素、臭素、ヨウ素を再現性良く1,8,13位に導入することに成功した。キラル1-クロロー8-ブロモー13-ヨウドトリプチセンも合成することができた。トリブロモトリプチセンを用いて鈴木カップリング、ヘック反応などの各種カップリング反応でアリール基、アルキニル基、ビニル基などの導入に成功した。 トリプチセンを土台としてその平面上に垂直に置換基を構築し、その末端を連結させることで開口型かご分子の合成を試みた。アミノフェニルトリプチセンに対し置換基を持つベンズアミドを合成し、2+2+2型の環化付加により、低収率ながら環状ヘキサフェニレンを合成することに成功した。また閉環メタセシス反応を活用することで、シクロファン構造を高収率で合成することに成功した。土台により3つのユニットが近接位に位置するため、分子間では実現困難な閉環反応が進行したと考えられる。 トリプチセン上の置換基の近接効果を利用した連続反応の開発に成功した。トリブロモトリプチセンに対してパラジウム触媒でフェニルホウ酸を作用させると、C-H活性化に伴う1,5-パラジウム移動により、炭素臭素結合の還元、C-H切断反応に引き続く環化反応、さらに鈴木カップリグンが進行し、キラル架橋トリプチセンが生成した。さらに理論計算によりその反応機構を明らかにした。なお、この化合物はキラルカラムで光学分割にも成功し、キラルトリプチセンのプラットホームとしても有用である。 非臭素化エステルを原料とするイノラートの生成法を見出し、この方法で官能基化されたイノラートを生成し、ベンザインとのトリプル環化反応により様々なトリプチセンを合成することができた。
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