研究実績の概要 |
我々は、RNAとハイブリッド錯体を形成することによって官能基転移を誘起し、部位特異的および塩基特異的に化学修飾する化学反応性人工核酸の開発に成功した。本研究では,mRNAに部位特異的に官能基を導入し,翻訳における効果を検証し,最終的には化学的編集反応の開発を目指した。 本研究では、mRNAの部位特異的な化学修飾の翻訳に与える効果を調べるため、短鎖ペプチドをコードする合成mRNAを用いて非細胞系翻訳システムによるペプチド合成を行った。合成されるペプチドには2種類の抗体認識配列を含んでおり、合成されるペプチドの単離が容易であり、質量分析による配列解析が容易である。2019年度までの検討では、コード領域のAC(C),G(C)GおよびG(C)Aの(C)で示したシチジンアミノ基をアルキル化修飾したmRNAの翻訳反応では,未修飾mRNAと同じペプチドの産生が確認され化学修飾の影響は見られなかった。さらに,終始コドンを2か所含むmRNAのうち,5‘側に近いUA(A)の(A)で示したアデノシンをアルキル化修飾したmRNAの翻訳では,このストップコドンで翻訳が停止した短いペプチドの産生が確認され,リードスルー活性が見られないことが分かった。そこで、2020年度は,アルキル化修飾体にさらにクリック反応で低分子の導入を検討し、種々の分子の導入に成功した。これらの部位特異的化学修飾mRNAを用いて、非細胞翻訳系でペプチドを産生させ、UPLC/MSで精密分析した。修飾構造の効果の詳細については不明だが、正常な翻訳生成物以外に、異常なペプチドの産生が確認された。これらの結果は、mRNAの部位特異的な化学修飾による翻訳の制御の可能性を示唆するものである。RNAリボース2‘位水酸基アシル化検討では、2020年度には6-アミノプリン誘導体に代わる新しいプリン誘導体を設計し、合成に成功した。
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