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2019 年度 実績報告書

IDO/TDO二重阻害に基づく新規がん免疫治療薬の開発に向けた創薬基盤研究

研究課題

研究課題/領域番号 18H02559
研究機関静岡県立大学

研究代表者

浅井 章良  静岡県立大学, 薬学研究院, 教授 (60381737)

研究分担者 小郷 尚久  静岡県立大学, 薬学研究院, 講師 (20501307)
村岡 大輔  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (20608955)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード抗がん剤 / トリプトファン / IDO / TDO / がん免疫
研究実績の概要

本研究課題では、IDO/TDO二重阻害に基づく新たながん免疫治療薬開発のための創薬基盤の構築を目的としている。本年度も、IDO/TDO二重阻害に係わる構造活性相関の把握と活性増強を目的として、誘導体のデザインと合成を進めた。具体的にはフェニル基への置換基効果、チオウレア窒素原子へのアルキル基やアリール基導入またはホルムアルデヒドを炭素源として様々なアミンとのトリアジン環化体合成を試みた。またチオウレア基の生物学的等価体としてアミド基に変換した誘導体を合成、評価した。これらと並行して、IDO/TDOの立体構造に基づく新たな阻害化合物のデザインとして、ドッキングソフトMOEを活用したファーマコフォアの同定を試みた。その結果、チオウレアタイプ、トリアジンタイプ、アミドタイプの構造的に多様性のある高活性なIDO/TDO二重阻害化合物を複数見出した。これらいずれのタイプでその酵素阻害活性はリード化合物に比べIDO/TDO共に10倍以上(酵素阻害IC50値ナノモルレベルに)向上した。またアミドタイプの中から、これまで報告例の極めて少ないTDO選択的な阻害化合物を発見した。
インシリコ解析では、誘導体のチオウレア基はIDOまたはTDOのヘム側鎖プロピオン酸及びその近傍にあるアミノ酸残基と水素結合を形成し、ヘム上の疎水性空間に誘導体のフェニル基が相互作用していること考えられる。更にIDOに関しては、フェニル基へ導入したハロゲン原子が、IDO疎水性空間に存在するシステイン残基の硫黄原子とハロゲン結合していることが示唆され、このことが酵素阻害活性向上に寄与していることも考察できる。腫瘍微小環境を反映したin vitro評価系については、条件培地を用いた手法によってがん細胞からのキヌレニン産生によるNK細胞の抑制と二重阻害剤による抑制解除作用を検証した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

イソチオウレア誘導体をリード化合物として、フェニル基への置換基効果、チオウレア窒素原子へのアルキル基やアリール基導入またはホルムアルデヒドを炭素源として様々なアミンとのトリアジン環化体、またチオウレア基の生物学的等価体としてアミド基に変換した誘導体を合成し酵素阻害活性を評価した。IDOまたはTDOの立体構造に基づく新たな阻害化合物のデザインとして、ドッキングソフトMOEを活用したファーマコフォアの同定と化合物デザインを行うことによって、チオウレアタイプ、トリアジンタイプ、アミドタイプの構造的に多様性のある高活性なIDO/TDO二重阻害化合物を複数見出すことに成功した。これら誘導体の酵素阻害活性はリード化合物に比べIDO/TDO共に10倍以上向上し、いずれも細胞系で強力にキヌレニン産生を阻害した。またアミドタイプの中から、これまで報告例の極めて少ないTDO選択的な阻害化合物を見出すことともできた。インシリコ解析によって、これら誘導体の二重阻害における活性向上を裏付けることができており、これらの情報は新規なIDO/TDO二重阻害化合物デザインのための基盤として有用である。
腫瘍微小環境を反映したin vitro評価系については、TDOを恒常的に発現しているA172細胞を用いてIDOとTDOの両酵素が発現している状況を再構築することに成功し、合成した二重阻害化合物の優位性を検証した。さらに条件培地を用いた実験系によって、がん細胞から産生されるキヌレニンによるNK細胞の抑制を確認し、二重阻害剤によってNK細胞の抑制が解除されることを明らかとした。一部の誘導体についてはCT26移植マウスにおける免疫チェックポイント阻害薬との併用効果を確認している。さらに遺伝子導入細胞を用いた評価系についても準備中であり、in vivoでの二重阻害に基づく免疫抑制解除薬としての有用性の検証を目指す。

今後の研究の推進方策

継続してインシリコによる誘導体のデザインと合成による構造最適化を進めつつ、標的分子へのレジデンスタイムの視点から共有結合型の誘導体の可能性についても検討予定。これまでのSAR情報はMOEを用いたドッキングモデリングの最適化にも活用すると同時に、バーチャルチャルスクリーニングへの応用も試みる。高活性なチオウレア誘導体については、酵素阻害のカイネティクス解析やヘムとの相互作用に関する生化学的な解析を加えることによって阻害様式をクリアーにする。並行して化合物-タンパク質複合体のX線結晶構造解析も継続する。培養細胞系においては、NK細胞の抑制解除作用に関する作用機序の詳細を検討し、さらにヘム合成を止めることによる酵素のアポ体への作用についても解析予定である。
現在、CT26移植マウスを用いて既存化学療法および免疫チェックポイント阻害薬との併用効果を検討中であり、一部の誘導体での抗腫瘍効果が得られていることから、構造タイプ別の化合物の経口投与後血中濃度測定をはじめとしたPK解析などの薬物動態試験を検討予定。本IDO/TDO二重阻害化合物については、低分子創薬の利点を活かし、まずは経口剤としての検討を進めている、経口吸収性や血中安定性が低い誘導体の場合には、別の投与経路を探索する。その際は化合物の物性(水溶性の高いチオウレアタイプ、脂溶性の高いトリアジン、アミドタイプ)を活かしたリポソーム化などにより積極的にマクロファージに取り込ませることもひとつのオプションとする。これらの手法によりIDO/TDO二重阻害化合物の効果が最大限に発揮できる条件を設定する。また樹立したIDO/TDOを恒常的発現株のマウスへの移植と薬剤による増殖抑制効果を評価し、さらに免疫パラメータの解析を行うことによって薬効の裏付けとなるデータを取得予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Antitumor activity of a novel oral STAT3 inhibitor YHO-17012020

    • 著者名/発表者名
      Fukiko Nishisaka, Keisuke Taniguchi, Momomi Tsugane, Genya Hirata, Akimitsu Takagi, Naoyuki Asakawa, Akinobu Kurita, Hiroyuki Takahashi, Naohisa Ogo, Yoshiyuki Shishido, Akira Asai
    • 雑誌名

      Cancer Sci.

      巻: 111 ページ: 1774-1784

    • DOI

      10.1111/cas.14369

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Discovery of a new STAT3 inhibitor acting on the linker domain2019

    • 著者名/発表者名
      Tatsuya Koseki, Naoya Suehiro, Yoshiaki Masuda, Nao Miyoshi, Daisuke Muraoka, Naohisa Ogo, Akira Asai
    • 雑誌名

      Biol. Pharm. Bull.

      巻: 42 ページ: 792-800

    • DOI

      10.1248/bpb.b18-00992

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Identification of benzo[d]pyrrolo[2,1-b]thiazole derivatives as CENP-E inhibitors2019

    • 著者名/発表者名
      Masayoshi Yamane, Jun-ichi Sawada, Naohisa Ogo, Mai Ohba, Takayuki Ando, Akira Asai
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 519 ページ: 505-511

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2019.09.028

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Selective inhibition of spindle microtubules by a tubulin-binding quinazoline derivative2019

    • 著者名/発表者名
      Jun-ichi Sawada, Hirosuke Ishii, Kenji Matsuno, Masayuki Sato, Yumiko Suzuki, Akira Asai
    • 雑誌名

      Mol Pharmacol.

      巻: 96 ページ: 609-618

    • DOI

      10.1124/mol.119.116624

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Impact of combination therapy with anti-PD-1 blockade and a STAT3 inhibitor on the tumor-infiltrating lymphocyte status2019

    • 著者名/発表者名
      Tadashi Ashizawa, Akira Iizuka, Chie Maeda, Emiko Tanaka, Ryota Kondou, Haruo Miyata, Takashi Sugino, Takuya Kawata, Shoichi Deguchi, Koichi Mitsuya, Nakamasa Hayashi, Akira Asai, Mamoru Ito, Ken Yamaguchi, Yasuto Akiyama
    • 雑誌名

      Immunol Lett.

      巻: 216 ページ: 43-50

    • DOI

      10.1016/j.imlet.2019.10.003

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] がん免疫療法を指向した新規IDO1阻害化合物の設計と合成2020

    • 著者名/発表者名
      小郷尚久、野仲智陽、石原桃子、渡部美都、太田克美、村上央、滝川修、浅井章良
    • 学会等名
      日本トリプトファン研究会第39回学術集会
  • [学会発表] SBDDによる新規IDO1阻害化合物の合成と構造活性相関研究2019

    • 著者名/発表者名
      野仲智陽、小郷尚久、渡部美都、石原桃子、太田克美、浅井章良
    • 学会等名
      日本ケミカルバイオロジー学会第14回年会
  • [学会発表] 低分子化合物による抗原認識能の向上作用の機構解明と大腸癌マウスモデルにおける腫瘍浸潤T 細胞への影響の解析2019

    • 著者名/発表者名
      道津洋介、村岡大輔、園田祐大、浅井章良、迎寛、池田裕明
    • 学会等名
      第23 回日本がん免疫学会総会
  • [学会発表] Low molecular compound promotes tumor antigen recognition and enhances the effector function of tumor infiltrating lymphocytes in cancer-bearing mouse model2019

    • 著者名/発表者名
      Yosuke Dotsu, Daisuke Muraoka, Yudai Sonoda , Akira Asai , Hiroshi Mukae, Hiroaki Ikeda
    • 学会等名
      第78回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] がん免疫療法を指向したSBDDによる新規IDO1阻害化合物の探索2019

    • 著者名/発表者名
      小郷尚久、野仲智陽、石原桃子、渡部美都、太田克美、村上央、滝川修、浅井章良
    • 学会等名
      第37回メディシナルケミストリーシンポジウム
  • [図書] 創薬における化合物ライブラリーとスクリーニングの関係と概要2019

    • 著者名/発表者名
      浅井章良
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      情報機構
    • ISBN
      978-4-86502-180-6
  • [備考] 創薬探索センター

    • URL

      https://w3pharm.u-shizuoka-ken.ac.jp/tansaku/

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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