研究課題
iPS細胞 (iPSC)由来神経細胞は、創薬研究や再生医療等への応用が期待されている。iPSC由来神経細胞の実用化に向けて、神経分化細胞の品質評価・管理手法の開発は必須である。現在は形態学的手法や電気生理学的手法等が用いられているが、操作性や再現性などに課題があり、簡便で再現性の高い分子マーカーの開発が求められている。糖タンパク質の糖鎖修飾は、組織、発生・成熟・老化、病態によって変化することや、タンパク質の機能を調節することが知られており、神経分化マーカーとしての有用性は極めて高い。しかし、神経分化と糖鎖修飾には不明な点も多く、分化マーカーとして利用された例は多くない。そこで、iPS細胞が神経細胞に分化する過程で生じる糖鎖修飾の変化を解析し、バイオインフォマティクスでその機能を予測することにより、神経分化マーカーを開発することを目的とした。初年度は、iPSCを神経幹細胞 (NSC)、神経前駆細胞 (NPC)、ドパミン作動性神経様細胞 (DA) に分化させ、LC/MS/MSによるタンパク質の網羅的解析を行い、各細胞に特徴的なタンパク質を特定した。翌年度は、各細胞トリプシン消化物から糖ペプチドを回収し、LC/MS/MSを用いたグライコプロテオミクスを行った。最終年度は、糖鎖解析ソフトByonoicを用いて糖鎖構造を推定し、神経細胞選択的な糖鎖構造としてBA2 (GlcNAc5・Man3・Fuc) を特定した。BA2は成長円錐に存在するセマフォリン、エフリン、スリットなど軸索反発作用分子とその受容体、およびニューレキシン/ニューロリギンなどシナプス接着分子に選択的に付加し、AMPA受容体等の神経伝達物質受容体には付加していないことを見出した。今後はBA2糖鎖の機能を明らかにし、神経分化マーカーとしての有用性を評価していく予定である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biomolecules
巻: 11 ページ: 508
10.3390/biom11040508