研究課題/領域番号 |
18H02564
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
平嶋 尚英 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (10192296)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | カルシウムストア / 分泌細胞 / Orai / マスト細胞 / エクソサイトーシス |
研究実績の概要 |
(1)Orai-2の機能と活性化機構 ①CRISPR-Cas9によるOrai-2ノックアウトマスト細胞の構築:平成30,31年と、CRISPR-Cas9によるRBL-2H3細胞におけるOrai-2のノックアウト細胞株の構築を試みた。6つのターゲット配列と、遺伝子導入法や条件を変えてノックアウトを試みたが、成功に至らなかった。しかしながら、CRISPR-Cas9を用いて、RBL-2H3細胞においてマスト細胞の脱顆粒に関与するMunc13-4をノックアウトして報告もあり、引き続き、RBL細胞でノックアウトを試みる。加えて、マウス骨髄由来マスト細胞(BMMC)でもノックアウトを行う。 ②Orai-2の活性化機構の解明:Orai-2とSTIMをYFPとCFPで蛍光標識した細胞を用いて、FRETによる両者の相互作用の検出を試みたが、刺激後の両者の相互作用による明瞭なFRETの変化は検出されなかった。そこで、蛍光タンパク質をmCherryとGFPに変えて同様のFRET実験を行ったが、現在までに刺激によるFRETの変化は検出されていない。そこで、蛍光タンパク質とSTIMあるいはOrai-2を発現した細胞から、ERと分泌顆粒を単離し、in vitroの系で、FRETの変化を検出することを試みる。 (2)分泌顆粒内Ca2+とER内Ca2+濃度動態の解析 平成31年度に構築した、分泌顆粒内Ca2+濃度測定のための蛍光タンパク質プローブを用いて顆粒内Ca2+濃度の測定を行ったが、抗原刺激に伴う明瞭な顆粒内Ca2+濃度の減少は検出されなかった。今後は、ER内のCa2+動態をMag-Fluo-4を用いて分泌顆粒内Ca2+濃度とER内Ca2+濃度を同時測定して、ERのCa2+濃度の減少が見られる近傍の分泌顆粒に着目して測定することを試みる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)Orai-2のノックアウト細胞の解析 CRISPR-Cas9によるOrai-2のノックアウトができていないため、研究が遅れている。RBL-2H3細胞でのCRISPR-Cas9による遺伝子のノックアウトは例が少なく、細胞の性質上、ノックアウトが困難な細胞と思われる。 (2)蛍光タンパク質間のFRETを利用した分泌顆粒のOrai-2とERのSTIM1との相互作用 それぞれの融合タンパク質の局在化には成功しているが、分泌顆粒が静止しておらず、かなり動くために、分泌顆粒膜近傍のERのFRETを継続的に高感度に測定することに困難がある。 (3)分泌顆粒内Ca2+とER内Ca2+濃度動態 分泌顆粒内のCa2+濃度変化が検出できないのは、Ca2+が枯渇したERと相互作用している分泌顆粒が特定できないこと、そして、分泌顆粒が静止しておらず、正しく顆粒内のCa2+を測定するのに困難が伴うためである。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)Orai-2のノックアウト RBL-2H3細胞でのCRISPR-Cas9による遺伝子のノックアウトは例が少なく、細胞の性質上、ノックアウトが困難な細胞といえる。しかしながら、Munc13-4のように成功例がないわけではないので、前例を参考にしながら、さらに検討を行う。 (2)蛍光タンパク質間のFRETを利用した分泌顆粒のOrai-2とERのSTIM1との相互作用 分泌顆粒が静止していないことが大きな原因と考えられる。分泌顆粒の動きを抑制する試薬がいくつか知られているので、そのような試薬存在下での測定を試みる。 (3)分泌顆粒内Ca2+とER内Ca2+濃度動態 分泌顆粒内のCa2+濃度変化が検出できないのは、Ca2+が枯渇したERと相互作用している分泌顆粒が特定できないこと、そして、分泌顆粒が静止していないことが大きな原因と考えられるので、上述の分泌顆粒の動きを抑制する条件下で測定を行う。また、ER内のCa2+動態をMag-Fluo-4を用いて分泌顆粒内Ca2+濃度とER内Ca2+濃度を同時測定して、ERのCa2+濃度の減少が見られる近傍の分泌顆粒に着目して測定することを試みる。
|