(1)Orai-2の機能と活性化機構 ①CRISPR-Cas9によるOrai-2ノックアウトマスト細胞の構築:平成30,31年、に引き続き、令和2年度もCRISPR-Cas9によるRBL-2H3細胞におけるOrai-2のノックアウト細胞株の構築を試みた。ターゲット配列を新たにするとともに、RBL細胞でノックアウトの実績のあるベクターに切り替え、ノックアウト株の選別を確実に行うためにピューロマイシン耐性遺伝子を組み込む相同組換えによるノックアウトを試みた。現在、ピューロマイシン耐性株の単離とOrai2の発現解析を行っている。 ②Orai-2の活性化機構の解明:Orai-2とSTIMを蛍光タンパク質で標識した細胞を用いて、FRETによる両者の相互作用の検出を試みたが、刺激後の両者の相互作用による明瞭なFRETの変化は分泌顆粒膜上では検出されなかった。 (2)分泌顆粒内Ca2+とER内Ca2+濃度動態の解析 RBL-2H3細胞のER内のCa2+動態をMag-Fluo-4を用いて測定した。抗原刺激によってER内のCa2+濃度が減少することを確認した。分泌顆粒内Ca2+濃度測定のための蛍光タンパク質プローブを用いて顆粒内Ca2+濃度の測定を行ったが、抗原刺激に伴う顆粒内Ca2+濃度の減少は検出されなかった。 分泌顆粒に局在するOrai-2とERに局在するSTIMの間に抗原刺激依存的な相互作用は、FRETによる検討では検出できないこと、また、分泌顆粒局在Ca2+プローブを用いた、抗原刺激に伴う分泌顆粒内Ca2+濃度の低下が検出されなかったことから、分泌顆粒が細胞内Ca2+ストアとして機能しているというデータは得られなかった。
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