今年度は、MC4R欠損マウス、MC4R/IPダブル欠損マウスに加え、MC4R/FPダブル欠損マウスについても解析を行った。4~6週のウェスタンダイエット後に四塩化炭素を少量1回投与することにより、四塩化炭素投与10日でNASH様症状を示す短期間NASHモデルについて、MC4R欠損マウスとMC4R/FPダブル欠損マウス間で解析をおこなった。四塩化炭素投与後、1日で両群とも著明な血中トランスアミナーゼの上昇を認め、その後下がっていった。MC4R/FPダブル欠損マウスにおいては、四塩化炭素投与1日での著明なALT上昇が、MC4R欠損マウスより減弱した。またMC4R、MC4R/IP、MC4R/FPの各欠損マウスの肝組織における線維化関連因子mRNA発現をリアルタイムRT-PCRで解析したところ、四塩化炭素投与1日後のCTGF mRNA発現は、MC4R欠損マウス肝臓と比較してMC4R/FPダブル欠損マウスにおいて有意に低値を示し、MC4R/IPダブル欠損マウスにおいてMC4R 欠損マウスと同等であった。一方、タイプⅠコラーゲン、タイプⅢコラーゲンmRNAについては、MC4R/FPダブル欠損マウスの肝臓において減弱傾向を示したが、MC4R/IPダブル欠損マウスにおいては、MC4R 欠損マウスと同等であった。TGF-betaについては3群間で発現変動に大きな差を認めなかった。さらにシリウスレッド染色をおこなった結果、前年度にMC4R/IPダブル欠損マウス肝臓の線維化は、MC4R欠損マウス肝臓より亢進しているようであったが、MC4R/FPダブル欠損マウス肝臓においては、MC4R欠損マウスよりも線維化の進行が遅延しているようであった。これらの結果は、プロスタノイドは、PGI2とPGF2alpha で肝線維化に対し相反する働きをすることを示唆している。
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